実際には一国の経済全体は、政府部門だけで成り立っているわけではない。家計、企業など民間部門の経済行動を合わせて、「国の借金」を考えなければ問題の本質は見えてこない。
政府部門が債務超過という診断があったとしても、税制の問題かもしれないし、家計・企業を含めた一国全体の経済状況の問題かもしれない。財政の専門家は、政府部門だけにフォーカスして財政赤字を論じるので処方箋はシンプルで、ともすれば、税制変更(増税)や歳出抑制だけになる。
一方、政府部門の財政赤字の問題は、一国経済全体の広い視点でとらえ、処方箋を考えることができる。日本の財政赤字をそう考えると、財政健全化が仮に必要としても、増税以外の政策(経済成長率押し上げ)がベストの政策選択である可能性が高い。先に示したように、財政赤字と税収の推移をみれば、民間の経済成長に大きく依存している税収が、増税なしで大幅に改善する余地があることは明らかだ。
一国経済全体のパフォーマンスは突き詰めると、民間の経済活動によって決まる。民間主導で経済活動が活発化することによって、政府の財政赤字を減らすことにつながる。そうした幅広い視点で、いわゆる財政の問題が議論されることが、最近は少なくなっているのではないか。
2000年代半ばに小泉政権下で経済財政政策が議論された時には、成長率・金利論争が繰り広げられるなど、幅広い視点で、真剣に日本の経済政策について議論が行われていた。消費増税の再引き上げが視野に入っているが、そうした幅広い視点で財政問題が再び議論されれば、日本経済の復活はより確実になるだろう。
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