ソニーが金融事業を丸ごと取り込む3つの狙い 4000億円を投じて上場子会社を完全子会社化

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3つの狙いだけでなく別の意味もある。アメリカのヘッジファンド、サード・ポイントは2019年6月にソニーの半導体部門と金融部門の切り離しを求める書面を公開していた。だが、2019年9月に半導体部門を「成長を牽引する重要な事業」として分離を拒否。そして今回、金融部門を完全に取り込む。いわば、ファンドの要求に「NO」を示した形だ。

買収のタイミングも”最適”だったといえる。コロナウイルスの影響でソニーフィナンシャルグループの株価は右肩下がりだったからだ。2020年2月6日に2690円の年初来高値をつけたが、3月23日には一時1494円まで下がった。株式公開買い付けは1株当たり2600円で、直近の株価の3割のプレミアムをつけた。だがこれはコロナの影響で株価が下がる前の水準である。

社名変更を行う大きな意味

5月19日の経営方針説明会では、もう一つ大きな発表があった。「ソニー」から「ソニーグループ」への社名変更だ。これまでソニーには、本社機能に加えてエレキ事業の機能もあった。それをよりグループ本社機能に特化する。

実は、社名変更に至る兆候があった。2020年4月1日にテレビやオーディオ、スマホ端末といったエレキ製品の事業を統括する中間持ち株会社、ソニーエレクトロニクスを設立している。2021年4月から本社をソニーグループと社名変更した後は、ソニーエレクトロニクスが1958年以来使ってきた「ソニー」の社名を継承する。

この再定義の意味は大きい。なぜなら、エレキ事業の中間持ち株会社(ソニー)が、半導体子会社(ソニーセミコンダクタソリューションズ)や音楽事業の子会社(ソニー・ミュージックエンタテインメント)、そして完全子会社化後のソニーフィナンシャルと同等の位置づけになるからだ。ここからは、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というスローガンの下、エレキ企業から本格的に変わる意志がにじみ出ている。

新型コロナによる社会の変化を捉えて、ソニーがどう変わっていくのか。就任3年目の吉田社長にとって、今期はソニーグループの方向性を占う重要な年となりそうだ。

高橋 玲央 東洋経済 記者

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たかはし れお / Reo Takahashi

名古屋市出身、新聞社勤務を経て2018年10月に東洋経済新報社入社。証券など金融業界を担当。半導体、電子部品、重工業などにも興味。

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