2つ目の狙いは、経営基盤の安定化だ。ソニーフィナンシャルについて、「安定的な高収益を今後も期待できる事業で、ソニー全体の収益を安定させる役割を果たす」(吉田社長)としている。
5月13日に発表したソニーの2020年3月期決算は減収減益だったものの、営業利益は前期比5.5%減の8454億円と高水準をキープした。収益柱の一つでCMOSイメージセンサーに代表される半導体関連の拡大が業績を下支えした。一方、セグメント別では金融事業の営業利益が1296億円と貢献度は小さくない。前期比29%減益のパナソニックや37%減益のシャープと比べて、ソニーは新型コロナの影響による”傷”が比較的浅かった。
それでも先行きは不透明だ。ソニーは2021年3月期の業績予想を出していないが、十時裕樹CFOは「2020年3月期実績から少なくとも3割程度の減益となることが試算される」と危機感をあらわにした。収益性が低いテレビなどのエレクトロニクス部門がコロナの影響を受けるほか、映画や音楽といったコンテンツ系の部門でも、今後制作の遅れになどよるマイナス影響が徐々に出てくる。
事業の多様性が安定につながる
一方、ソニーフィナンシャルは2020年3月期は純利益が前期比19.9%増だった。こちらもコロナの影響から算定が難しいとして、2021年3月期の業績予想は出してない。ただ、国内の個人を中心とした事業特性から影響はあまり大きくないとみられる。5月19日のソニーの経営方針説明会でも、「(金融事業を含めた)事業の多様性が経営の安定につながる」と強調した。
そして3つ目は、完全子会社化でソニーグループの企業価値を高める狙いだ。現在、ソニーフィナンシャルの保有株比率は65.04%。これは「(親会社として)リスクは100%ソニーが取っていて、利益は65%しか来ない状態」(十時CFO)という不満があった。
だが、完全子会社化によってソニーフィナンシャルの利益のすべてを取り込めるため、2022年3月期以降は年間400億~500億円の純利益の増加につながると見ている。また、一体化することで意思決定が一元化され、経営判断などが迅速になる効果も期待される。
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