ソニーが自動車業界から人を続々引き抜く理由

10年後を見据える「仕込み作業」の実態

一度は「負け組」の烙印を押されたがそこから復活した(撮影:尾形 文繁、デザイン:小林 由依)

ソニーが今、完成車メーカーやティア1(自動車部品の1次下請け)など、自動車業界からの人材採用に力を入れている。「たとえばホンダのような大手自動車メーカーであったら、大人数のプロジェクトで歯車の1つであっても、ソニーに行けば自分が牽引できる立場になり、研究開発環境もよい。そこで普通の半導体メーカーには行かない完成車メーカーの人材も、ソニーならと転職を決めている」(ソニー関係者)。

彼らを引き寄せているのが、半導体子会社のソニーセミコンダクターソリューションズだ。

「これから事業参入しようという新しい部署なので、何事にも意欲的に、自分で考えて行動できるようなポジティブな方を歓迎します」――。

こんな触れ込みで、ソニーのホームページの中途採用の欄には半導体関連の求人が複数掲載されている。募集している職種は、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転車向けセンサーのソフトウェアエンジニア、自動車の安全規格に準拠した開発体制を構築するための品質担当エンジニアなど。なぜ自動車業界の人材が必要なのか。

次の成長軸の一つが車載半導体

7月1日発売の『週刊東洋経済』は、「ソニーに学べ!」を特集した。2008~2014年度の7年間で6度の最終赤字に陥り、一度は「もう終わった会社」の烙印を押されたソニーだが、今や高収益企業に変貌している。足元はゲーム事業の収益拡大などで好調ながら、中長期での成長軸が見えないという指摘もある。そこで2018年に社長に就任した吉田憲一郎社長は、2018~20年度までの中期経営計画の期間を「仕込み期間」と位置づけ、高い業績目標は設けずに次の成長軸作りを優先している。

『週刊東洋経済』7月1日発売号(7月6日号)の特集は「ソニーに学べ」です。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

その1つが、この車載半導体である。ソニーは、光を電子信号に変える撮像素子、CMOSイメージセンサーの世界シェア5割を握る。現在は売上高の8割が、アメリカのアップルや中国ファーウェイなどに向けたスマートフォンのカメラ用だが、市場は「2022年頃には頭打ちになると見られる」(IHSマークイットの李根秀主席アナリスト)。

そこで、この技術を用いて、自動運転車の「目」として周辺環境の認知に用いる車載センシングの事業化を進めている。2020年代半ばには市場が本格的に立ち上がるといわれる自動運転市場にあわせ、「人の命に関わることはやらない」という創業以来の不文律を破り、これまでほぼ手がけたことがなかった車載市場を狙う。そもそも半導体事業自体、車載向けに限らないものの、2020年度入社の技術系新卒の4割をここに振り分けるという力の入れようだ。

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