中国へサイバー攻撃を仕掛けるハッカーの実態 コロナに便乗ベトナムのハッカーの目的は

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1月13日に、中国国外で初めてとなる新型コロナウイルスの感染者がタイで見つかり、ベトナムで感染者が確認されたのはその10日後の1月23日だった。新型コロナウイルスの感染が中国国外に拡大したと報道される前から、ベトナム政府系のサイバー攻撃集団は、中国政府の対応に高い関心を寄せていたことになる。

ベトナム外務省の報道官は、ファイア・アイのブログが出た翌日の4月23日、定例記者会見で「事実無根」と報道を一蹴した。「ベトナムはあらゆるサイバー攻撃を禁じている。サイバー攻撃は非難されるべきものであり、法で厳しく取り締まらなければならない」と断じている。

なお、中国外交部の耿爽報道官は、4月24日の定例記者会見で、ファイア・アイが出したブログについてロイターから質問を受けた。しかし、サイバー攻撃が成功したかどうかとの問いへの直接の回答を避け、「新型コロナウイルスの感染が世界に拡大する中、対応に当たっている政府機関にサイバー攻撃するなどということは、世界中の人々から非難されるべきだ」とかわした。そして、「中国はサイバー攻撃で大変な被害を受けている」と主張した。

インド政府を装うパキスタンのなりすましメール

2016年からインド政府や、大使館、国防系組織にサイバー攻撃を仕掛け、情報を盗んでいるパキスタン政府系ハッカー集団がある。このハッカー集団が、インド政府を装ったなりすましメールを送っていたことが3月中旬に報じられた。

「新型コロナウイルスに関する衛生勧告」と題したエクセルファイルが添付されていた。これを開くと、被害者のブラウザーから認証情報が盗まれてしまうだけでなく、スクリーンショットが撮られ、被害者のアンチウイルスソフトの情報も収集されてしまう。

このパキスタン政府系ハッカー集団は、以前も、インドの軍や政府のデータベースから陸軍の戦略や訓練に関する文書、公式書簡を盗んだ。また、パスポートをスキャンした写真、個人情報、ショートメッセージや連絡先なども盗んだと言われる。

インド電子IT省は、位置情報を用いて、新型コロナウイルス感染者との接触履歴を追跡するためのアプリ「アローギャ・セトゥ(健康への架け橋)」の無償配布を4月2日から開始した。ところが、パキスタンの情報機関が偽アプリを作り、インドの軍人に無料メッセージアプリのワッツアップでイギリスから送っていたことが明らかになった。世界最大のワッツアップ利用国であるインドでは、利用者数が4億人以上にのぼる。

偽アプリをスマートフォンにダウンロードすると、スマートフォンに入れている連絡先などの機微な情報がパキスタンの情報機関に盗まれてしまう恐れがある。インドのオンラインニュースサイト「プリント」の4月27日付の記事が、インドの防衛当局者の見解として報じた。

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