中国へサイバー攻撃を仕掛けるハッカーの実態 コロナに便乗ベトナムのハッカーの目的は

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2008年11月26日にインド西部ムンバイで発生した同時多発テロでは、ホテルや駅など10カ所が襲撃され、日本人1人を含む170名以上が死亡した。インド政府は、パキスタンを本拠地にカシミール地方の分離独立を求める活動を行う過激派組織が起こしたテロと見なしており、両国間の緊張関係は再び高まった。

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以来、テロの発生した11月26日には、インドの複数のハッカー集団が、報復のためパキスタンのウェブサイトを改ざんするようになった。

新型コロナウイルスが収束するまで、関連する政策やワクチン、医薬情報を盗もうとするサイバー攻撃が世界中で止むことはないだろう。日本で新型コロナウイルスに取り組んでいる政府関係者、医療関係者、研究者たちも注意が必要だ。

なりすましメールのクリック率が激増

また、サイバー攻撃を仕掛けてくるのは、政府にとどまらない。金銭目的で個人情報やクレジットカード情報を盗むほか、身代金要求型ウイルスを使うサイバー犯罪者もいる。新型コロナウイルスの最新情報に飢えている人々の心理的な隙に付け込み、サイバー攻撃を行う。

『サイバーセキュリティ 組織を脅威から守る戦略・人材・インテリジェンス』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

今年4月のフォーブス誌の報道によると、新型コロナウイルスの感染拡大が始まる前と後では、なりすましメールのクリック率が5%未満から40%以上に激増した。サイバー攻撃の脅威が増す一方、厳しい経済状況に置かれている企業はなかなかサイバーセキュリティ予算を増やせない。世界の企業の4割はサイバーセキュリティ予算を削っている。アメリカのサイバーセキュリティ企業のバラクーダネットワークスが、5月6日に明らかにした。

サイバー攻撃の脅威が高まる一方、サイバーセキュリティ予算の増加がなかなか難しい今だからこそ、一般社員、特に今回初めてテレワークをしている社員のサイバーセキュリティの意識向上が大切だ。内閣サイバーセキュリティセンター、警視庁、独立行政法人 情報処理推進機構などが、テレワークで留意すべきサイバーセキュリティのポイントや最近のサイバー攻撃の手口を公開している。こうした一般公開情報も活用したサイバーセキュリティ強化が求められる。

松原 実穂子 NTT チーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジスト

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まつばら みほこ / Mihoko Matsubara

早稲田大学卒業後、防衛省にて勤務。ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院に留学し、国際経済・国際関係の修士号取得。修了後ハワイのパシフィック・フォーラムCSISにて研究員として勤務。帰国後、日立システムズでサイバーセキュリティのアナリスト、インテルでサイバーセキュリティ政策部長、パロアルトネットワークスのアジア太平洋地域拠点における公共担当の最高セキュリティ責任者兼副社長を歴任。現在はNTTのチーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジストとしてサイバーセキュリティに関する情報発信と提言に努める。著書に『サイバーセキュリティ 組織を脅威から守る戦略・人材・インテリジェンス』(新潮社)。

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