コロナ禍が教えた「妊婦に遠隔診療が必要な訳」

医療過疎地域や離島の経験が今後の糧になる

先日は、本土より奄美大島へ里帰り分娩目的で帰省した妊婦が小田切さんの病院に電話をしてきた。現在この病院では里帰り出産の受け入れを中止しているが、その少し前、まだ緊急事態宣言が出される直前のことだ。2週間待機してもらうと、里帰り前の妊婦健診からかなり間隔が開いてしまうことがわかり、心配になった小田切さんは臨時的にオンラインの妊婦健診を行った。

あらかじめ自宅に血圧計と体温計を用意してもらい、モニターを妊婦の自宅へ郵送し、妊婦のスマホと小田切さんのPCをつないで実施したところ、問診の中で妊娠中に多い右腎盂腎炎が疑われ、抗生剤の内服薬を処方することになった。もし女性が「2週間は病院に行けない」と1人で我慢していたら、右腎盂腎炎はどうなっていただろう。

島の医療を新型コロナウイルス感染から守らなくてはいけない。でも帰郷の人も守りたいという医師の思いと、オンライン健診という決断があって初めて成しえた早期発見だった。

名瀬徳洲会病院の小田切幸平さん。コロナ感染を警戒し、本土から帰郷したばかりの女性はオンラインで診察(写真提供:小田切幸平)

3密の待合室にみるみる空間が生まれた

北海道では、鈴木直道知事が道独自の緊急事態宣言を出したころ、まだ39歳の産科医・馬詰武さん(北海道大学産科助教)が素早く動いた。

北海道大学病院が、妊娠中期以降で大きな問題がない人は、来院が必須な検査がある回を除いてオンライン妊婦健診とする方針を臨時的にとり、その結果、産科の外来人数は約3分の2に減らすことができた。3密だった待合室に、みるみる空間が生まれた。

都市部で、しかもここまで大規模にオンライン妊婦健診が行われたのは、日本初のことである。

北海道大学病院・馬詰武さん。鈴木知事が緊急宣言を出したその翌週には、妊婦健診をオンライン化した(筆者撮影)

背景には、産科医がいない地域が広大に広がる北海道という土地柄がある。馬詰さんが遠隔医療に関心を持ったのは、当初はコロナのためではなかった。「どさんこプロジェクト」と称する周産期遠隔医療ネットワークを北海道庁、道内の医療施設等とともに立ち上げたばかりだった。奇遇にもその直後に、北海道は感染の第1波に見舞われた。

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