SBIが三井住友と提携、次に組むのはどこか ネットの顧客接点拡大を狙い提携は加速必至

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SBIが無料化戦略を仕掛けた一方、メガバンクとの提携を通じて別の分野で競争力の強化を図るのは自然な流れだったといえる。そして、ネットを通じた顧客基盤の拡充を図れる三井住友にとってもメリットがある。

他のメガバンクもネットの顧客接点強化を急いでいる。みずほフィナンシャルグループはLINEと共同でLINE Bankの立ち上げを進めており、2020年度中の新銀行設立を目指している。LINEの月間利用者数は8000万人以上。2019年8月に野村ホールディングスがLINEと共同でLINE証券のサービスを開始しており、既存の金融機関からすると魅力的な顧客基盤を持つ存在だといえる。

今回、SBIは三井住友と組んだものの、提携相手を限定しているわけではない。北尾社長は4月下旬の会見で、「あくまでも(当社の)メインバンクはみずほ。恩をあだで返すようなことはしない」と述べている。三井住友に続き、みずほとも提携する可能性もあるだろう。

楽天証券はどう動くか

三菱UFJフィナンシャル・グループは今のところ、国内のネット系企業と提携する動きはない。KDDIと折半出資で「じぶん銀行」を持っていたが、2019年4月にKDDIが出資比率を63.8%まで高めて連結子会社化。行名も「auじぶん銀行」に変更した。「カブドットコム証券」にはKDDIが49%出資して「auカブコム証券」となっており、KDDI色を強めている。

3メガバンクの現時点の動きは「顧客接点強化戦略の一部」(関係者)という声も多い。ネット証券分野で次に注目されるのは、業界2位(410万口座)につける楽天証券の動向だろう。リアルに強い大手金融機関と顧客を豊富に持つネット企業が提携をどう具体化していくかは、今後の金融業界の勢力図を占ううえでも重要な要素になる。SBIと三井住友の提携は始まりにすぎない。

藤原 宏成 東洋経済 記者

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ふじわら ひろなる / Hironaru Fujiwara

1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。銀行など金融業界を担当。

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梅垣 勇人 東洋経済 記者

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うめがき はやと / Hayato Umegaki

証券業界を担当後、2023年4月から電機業界担当に。兵庫県生まれ。中学・高校時代をタイと中国で過ごし、2014年に帰国。京都大学経済学部卒業。学生時代には写真部の傍ら学園祭実行委員として暗躍した。休日は書店や家電量販店で新商品をチェックしている。

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