「米失業率が最悪でも株価上昇」で大丈夫なのか もう一度「暴落」する危険性はないのだろうか
したがって、PERでなく、PBR(株価純資産倍率)で下値メドを考えるべきだと主張してきたのだが、日経平均の実績PBR(日本経済新聞社調べ)は、近年の最低値である0.81倍(2009年3月)に対し、今年3月の最低値は0.82倍と、ほぼ同水準であった。したがって、日経平均も3月で最安値を形成したとしても、全くおかしくない。
余談だが、最近のアメリカでも同様の現象(利益予想値の急減)が起こり、今はアメリカ株でもPERは使えない。これは大幅な不況時に共通の現象だ。
一方で、アメリカ株の場合、日本株のように「PBRの0.8倍台が明確に下値メドを示す」、といったような「岩盤となる数値」がない。理由は全くわからないが、過去にアメリカのPBRは1倍に低下したことすらない(近年の週平均値ベースでの最低値は、2009年3月の1.42倍、ファクトセット調べ)。ただ、今年3月の安値時のPBRである2.52倍は、2016年2月の2.48倍(リーマンショック時に次ぐ最低値)とほぼ並ぶため、やはりアメリカ株の大底が3月であったとして、おかしくはないだろう。
パニックから「確実で大幅な悪化」踏まえ底値固めへ
ところが、こうした灰色のサイによる株価下落ではなく、「新型コロナウイルスの流行というブラックスワンが市場を動かしている」、と固く信じている向きは、「新型コロナウイルスが流行さえしなければ、日経平均はまっすぐ3万円に向かったはずなのに、コロナのせいで株価のシナリオは一変し、日経平均は1万円になってしまうかもしれない」という考えにとらわれてしまう。そうなってしまうと、実際の主要国の経済指標が悪化しているのに3月後半を底として株価が上がった、ということが理解できなくなる。
もう一つの「そもそも」の観点は、これも以前当コラムで述べたことなので、また繰り返しになって恐縮だが、3月の日米等の株価の最安値は、「新型コロナウイルスの流行がどれほどの経済への打撃になるのか全く分からない」という、パニック相場だったと言える。
そうしたパニック心理は、株価下落とほぼ同時に、安全資産と言われる、米国長期国債や金までもが換金のため叩き売られたことや、VIX指数(恐怖指数)が急上昇したことにも表れている。
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