RPAで「ロボットが企業を変える」は幻想なのか アフターコロナで業務自動化は引き返せない

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RPAはブームになって約3年で幻滅期に突入した。定着させるには、サービス提供側のサポートと、導入企業側の体制作りの両方が不可欠だ(写真:RPAHD)

近年日本の産業界で急速に浮上したキーワードが「RPA」。ロボティック・プロセス・オートメーションの略で、「ロボットによる業務自動化」などと訳される。人手不足や業務効率化の解決策として、大企業を中心に導入が進んでいる。

有名企業の事例はメディアで広く紹介され、株式市場でもテーマとして注目されるようになった。そんなブームの中、2018年3月に東証マザーズに上場したのが、RPAホールディングス(HD)だ。同社は期待通り、2018年度は売上高、営業利益ともに、前期の2倍となる成長を達成。続く2019年度も売上高、営業利益とも7割増となる計画を掲げていた。

しかし、2019年度は厳しい環境となった。RPA導入後の失敗例も徐々に伝わるようになり、調査会社ガートナージャパンは2019年10月、RPAは熱狂が冷め、期待が一気に幻滅へと変わる”幻滅期”に突入したとの見解を示した。RPAHDも序盤から計画に対する遅れが生じ、2020年1月に初めて業績予想を下方修正。営業減益となったのだ。

一方、今年3月以降は新型コロナウイルスの影響が拡大し、多くの企業が在宅でのリモートワークに移行するなど、働き方も激変している。苦戦から巻き返し、RPAを定着させることができるのか。

コンサル会社から始まり、間接部門に着目

RPAHDはネットを活用した新事業のコンサルティング会社として2000年に発足。その後、2008年秋のリーマンショックで経営危機を迎え、自ら事業を行う会社に転換している。転換期の同年に提供を始めたのが、RPAサービス「BizRobo!(ビズロボ)」だ。製造業はFA(ファクトリー・オートメーション)で工場の自動化が進んだが、オフィスでの間接部門は仕事の多くをルーティンワークが占め、効率化されていない。この点に着目し、RPAツールの提供に乗り出したのだった。

ビズロボは、データ入力やデータ連携などの処理を学習して作業工程を記録し、人間に代わって業務を行うロボットを作るプラットフォーム。人力では面倒な作業も、ミスなく、ごく短時間で完了できる。イメージは、表計算ソフトのエクセル上での作業を記録し、自動的に実行してくれるマクロ機能の拡大版といったところだろうか。「WinActor」(NTTグループ)、「UiPath」(UiPath社)などが主な競合である。

【2020年5月22日12時6分追記】WinActorについて、初出時の表記を上記のように修正しました。

ロボットの作成例をごく簡単に説明すると次のようなものだ。交通費の申請をチェックするロボットの場合、まず提出されたエクセルファイルを読み込み。次に日付や出発駅、到着駅、金額など、申請の各項目を抽出。それを乗り換え情報サイトで入力し、交通費の金額を抽出。申請の金額と合致していれば〇をつける。こうした一連の作業をビズロボの画面で行い、工程を示すステップを形成していく流れだ。プログラミング技術は不要で、現場でロボットを作り、管理できる点が売りになっている。

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