RPAで「ロボットが企業を変える」は幻想なのか アフターコロナで業務自動化は引き返せない

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RPAテクロノジーズの大角社長は「さまざまな地域や業種で課題を解決する人たちがRPAの主役。ビズロボ上で多種多様のロボットが生まれていくことが大事」と強調する(写真:RPAHD)

ブーム沈静化の要因は、理想と現実の乖離だ。ツールを現場で運用しきれず、ITベンダーに任せきりにしてしまうケースなどが挙げられる。ビズロボでも、例外的な処理が発生するとロボットは止まり、人が対処するが、ここでつまずく例があるという。「どのような業務にも例外がある。ロボットを自動化ツールとしてではなく、一緒に働く人材だと認識して活用していく必要がある」(大角社長)。導入する企業も運用体制を作れなければ、効果を得ることはできないようだ。

そもそもRPAの導入は、ルーティンワークの作業時間削減がゴールではない。人的資源を「人間にしかできない業務」に充て、付加価値を生み出す必要がある。組織改革なども必要なことを考えれば、一朝一夕に成果をもたらすことは難しい。

こうした状況を打破するには、顧客企業を後押しし、RPAを定着させる活動が重要だ。そこで、販売体制の構築と並行し、顧客へのサポートを重点的に強化している。顧客向けのサポートツールやWebセミナー、トレーニングコンテンツなどを拡充。ユーザー同士の交流も促進している。専門チームがWeb会議やチャットなどを駆使し、利用状況のモニタリングや個別サポート、アップセルなどを支援する。2020年度の上期(3~8月)はオンラインで完結できる営業・サポート体制を徹底して整備する方針だ。

足元では新型コロナの影響による業務改善のサポートを進める。RPAHDは4月の本社移転を機に完全リモートワーク体制に移行しており、企業からの問い合わせも多いことから、自社のロボットを活用した効率化ノウハウを無料で公開、無料診断サービスも開始した。さらに、医療機関におけるルーティンワークを代行するロボットの一部無料キャンペーンも打ち出すなど、新規開拓が難しい状況でも着実に裾野を広げる考えだ。

労働人口減でロボット化への流れは不可避

「長期的に労働人口の減少という課題は決して避けて通れない。コロナの影響がなくても、ロボットを内製し、運用していくことが100%必要だと考えている。アフターコロナは外部に委託していたものを自ら行う空気感になっていくだろう。そうした点を踏まえ、ビジネスを作っていきたい」(大角社長)。

2019年のビズロボのイベントの様子。ここで見込み客を獲得してきたが、現在はオンラインでの営業やサポートに力を入れている(写真:RPAHD)

グループ全体でも一段の成長を狙う。併営する成果報酬型広告事業は広告枠の仕入れ・販売、請求・支払いやデータ収集など、大半の業務でロボットを活用する。効率の高さを売りに、他社から顧客を獲得し、急成長が続く。新規事業として、領収書や請求書をスキャンしデータ化する事務ロボや、コンプライアンスチェック業務用のロボットなど、パッケージ化されたロボットを活用したサービスの開発も本格化させている。

幻滅期と称されるRPA。中小企業や地方企業への導入を進め、顧客が自力で活用できるサイクルを作り、”定着期”を迎えることができるか。ブームを過ぎた今だからこそ、日本における先駆者として、その力量が試されることになる。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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