マレーシアの経済活動再開に映る強烈な危機感 コロナ感染抑制が奏功した一方、不安も募るが

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クアラルンプール市内のスーパーマーケットでは、入店前に必ず検温が行われる(筆者撮影)

ムヒディン首相は5月1日、活動制限令が与える経済的損失は、1日当たり24億リンギ(約589億円)と見込まれており、これまでに630億リンギ(約1兆5500億円)にも及ぶ損失が生じていると指摘。もし、今後1カ月に渡り活動制限令を延長し続けた場合、経済損失がさらに350億リンギ(約8600億円)、これまでの損失と合わせると実に980億リンギ (約2兆4100億円) もの巨額損失となり、国家に与えるダメージは相当なものとなる。経済再生への道筋も描きづらくなると同時に、経済界からも強い要請があったとみられており、社会活動の早急な再開を迫られていた。

現に、5つ星ホテルを含む高級ホテルも次々に倒産していたほか、流行に敏感な若者や観光客で賑わっていた、観光地コタキナバルのハードロックカフェも突然倒産。2015年4月にオープン、まだ5年しか経たないなかで、今後すぐには国内外からの観光客が見込めず、資金繰りが困難であったことが原因とみられている。

最悪は失業者240万人の試算も

さらに、中小零細企業から屋台経営者などを含め失業者も相次ぐなど、1カ月半に及ぶ社会活動の停止が国民生活に与える打撃は甚大だ。マレーシア政府系シンクタンクのマレーシア経済研究所(MIER)は、新型コロナウイルスの影響で最悪の場合、失業者は240万人と過去最悪を記録する可能性を指摘、約67%が非熟練労働者だとしている。

マレーシア政府は、新型コロナウイルスの感染拡大に加え、原油価格下落などの影響を考慮し、1兆4800億リンギ(約36兆3700億円)と見積もっていた今年の実質GDPが、1兆4100億リンギ(約34兆6500億円)まで落ち込むと下方修正した。

日本では、5月4日午後の新型コロナウイルス特別措置法に基づく政府対策本部会合で、安倍晋三首相が新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言に関して、全都道府県を対象としたまま5月31日までの25日間延長すると表明した。5月14日をメドに専門家会議を開き、地域ごとの感染者数や医療提供体制を分析したうえで、「解除の可否」を検討する構えだ。具体的な解除にあたっての目安などは今後、さらに専門家の意見を仰ぎながら見定めていくことになり、難しい判断が迫られている。

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