マレーシアの経済活動再開に映る強烈な危機感

コロナ感染抑制が奏功した一方、不安も募るが

マレーシアの首都クアラルンプールで警戒に当たる警察官。活動制限令下では飲食店が営業していないかなど厳しく取り締まりが行われた。「緩和」後もテイクアウトのみとする店舗は少なくない(筆者撮影)

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、アジア初の国境封鎖と活動制限に踏み切ったマレーシアが、「事実上のロックダウン緩和」に舵を切った。

3月18日にムヒディン首相の号令で始まった活動制限令は、これまで3回にわたり延長され、その期限は5月12日までとされていた。マレーシアでは、4月24日からラマダン(断食月)がスタートし、5月24日から26日には、断食明け大祭(ハリラヤ・プアサ)を迎える。

例年は多くの国民が故郷に帰省して祝うなど、民族大移動となるのが恒例だが、その大移動が感染拡大を引き起こすことなどが懸念される。5月12日を期限としていた活動制限令も、4度目の再延長になるのではという見方をする国民は少なくなかった。

期限を前にして突如「緩和」宣言された活動制限令

その予想に反して5月1日のメーデーの日、突如としてムヒディン首相が活動制限令の緩和を発表したのだ。これにより、大部分の企業や工場、商店、レストランの操業が、政府が定めた規制内容(SOP)を遵守することを条件に許可されるなど、事実上ほぼすべての経済活動および、社会活動が再開されることになった。

これまで、屋外でのジョギングなども厳しく取り締まられていたものの、これも10人以下の集団であれば、社会的距離を保つソーシャル・ディスタンシングを条件に許可され、サイクリングやゴルフ、テニスなども屋外で無観客であることを条件に認められる。これまで、市民の外出を罰則付きで厳しく取り締まってきたマレーシアだが、活動制限令の期限である5月12日より大幅に前倒しして、突然の条件付き「緩和」が宣言された形となる。

その背景には、「マレーシア『日本を追い抜いた』感染抑制の成果」(2020年4月20日配信)でも報じたように、マレーシアではこの2週間ほどで徐々に厳しい活動制限による感染抑制の効果が数字として確実に表れ始めていたことが挙げられる。4月2日時点では、日本の感染者数2384人に対し、マレーシアの感染者数は2908人だったが、現時点では日本の感染者数がマレーシアの2倍以上となっており、早期に活動制限を開始したマレーシアで感染者数の伸び率が着実に下がっていったことはデータからも浮かび上がる。

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