コロナ対策から考える「優れた戦略」「悪い戦略」 タイミングの問題を解決する4つの戦略理論

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マスクのあまりの高額転売を見かねた政府は「転売禁止」の方針を打ち出しました。そうでなくても、シャープのマスク生産と販売が始まる頃には、ファーストムーバ―の転売業は完全にチャンスを失ったでしょう。賢い者はすでに撤退して、動きの鈍い者だけが在庫を抱えて取り残されているはずです。

なぜGAFAは、ファーストムーバ―を圧倒したのか?

書籍『the four GAFA四騎士が創り変えた世界』の著者である、スコット・ギャロウェイも、最初に参入することが必ずしも利益にならないと指摘しています。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)自体が、その業界における最初のイノベータ―ではなかったからです。

グーグルの前に初期の検索エンジンがあり、アップルは最初にPCを開発した企業ではありません。アマゾンの前にも、オンライン書店は存在していました。

書籍にはこう書かれています。「ある業界のパイオニアが、うしろから撃たれることはよくある。四騎士たちもまた後発組だ(中略)。彼らは先行者の死骸をあさって情報を集め、間違いから学び、資産を買い上げ、顧客を奪って成長した」。

『3000年の叡智を学べる 戦略図鑑』(かんき出版)
書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

グーグルは、アルゴリズムの優秀さと「情報の信頼性」を軸にした最初の検索エンジンであり、アップルは「より簡単にPCを使えるインターフェイスを備えたPC」を発売した最初の企業だったのです。

この点から現在導入が始まっているテレワークを考えると、単にコロナウィルス対策でテレワークを始めた企業は、やがてその習慣を捨てていく一方で、「テレワークのほうが成功できる事業や方法」を発見した企業は、そのノウハウを他社に売るようなビジネスで、新しくできた業界の支配者になる可能性を秘めています。

一方で「やはりテレワークでは実現できない要素」を発見した企業も、テレワークを一斉に導入した他社に、「テレワークを補完する重要な要素」を広く販売できるようになるでしょう。

GAFAから学ぶ戦略とは、「新しくできた業界に参入する」のではなく、「新しくできた業界の支配者になるためのカギ」を発見することです。このカギを発見できた瞬間こそが、皆さんの会社がその業界に参入する、ベストのタイミングだと言えるのです。

コロナウィルスは、非常に難しい問題に企業を直面させています。危機に対処しながらも、私たちは利益を生み出す必要があるからです。

そんなとき、決断と行動のタイミングひとつとっても、戦略は私たちにチャンスがどこにあるかを示唆してくれるのです。危機にこそ戦略の活用が必要ですし、危機にこそ戦略がより輝くともいえるのです。

「戦略思考」は、企業だけでなく、私たちひとりひとりの人生にも大いに役立ちます。「戦略」には、競争相手のいる「競争戦略」だけでなく、健康管理をしたり安全運転を心がけるといった、私たちにとって非常に身近な「競争のない戦略」もあります。戦略は、これらの目標を達成するときの「追いかける指標」として、私たちを勝利に導いてくれるのです

ぜひみなさんも、豊かで実りある人生を送るべく、先人たちが築いてきた古今東西の戦略知識を学び、戦略思考を身につけましょう。

鈴木 博毅 ビジネス戦略、組織論、マーケティングコンサルタント

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すずき ひろき / Hiroki Suzuki

1972年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。貿易商社にてカナダ・オーストラリアの資源輸入業務に従事。その後国内コンサルティング会社に勤務し、2001年に独立。戦略論や企業史を分析し、新たなイノベーションのヒントを探ることをライフワークとしている。『「超」入門 失敗の本質』(以上、ダイヤモンド社)、『実践版 孫子の兵法』(プレジデント社)、『3000年の叡智を学べる 戦略図鑑』(かんき出版)など著書多数。

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