学習塾のオンライン化「諸刃の剣」と言える理由 塾経営者たちが語るメリットとデメリット

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また、学習塾の中でも先進的な取り組みを行う塾と、そうではない塾の2極化が進むことが考えられる。前述の佐久間さんが教える。

「大手から街の学習塾を合わせると、全国に約5万教室あると言われています。我々のComiruの導入は1800教室足らずですが、業界ナンバーワンと呼ばれています。裏を返せば、まだまだアナログな手法で経営をされている塾が多いということ」

オンライン化の流れが加速すれば、先述したような問題や軋轢がどんどん顕在化することが予想される。オンライン化は、諸刃の剣。だが、それは同時に「学習塾の新しい扉を開くことにもなる」と桜学舎の亀山さんは語る。

「大手ではない我々のような街の学習塾は、商圏という絶対的な問題が横たわっています。遠方から生徒を通わせることが現実的ではありませんから、どれだけいい指導、いい講師を揃えても限界がありました。私が2年も前からオンライン授業に取り組んだのは、そういった商圏に関係なく生徒に高品質の授業を届けられないかと考えたからなんですね」

「遠方の生徒の負担」軽減できる希望も

島根県隠岐郡西ノ島町と縁のあった桜学舎は、放課後教室というような形で週に2回、オンラインで指導をお手伝いしているそうだ。島には塾がなく、教育委員会が公営の塾を設営していたが限界がある。そこで亀山さんが一肌脱ぐことになった。今では、北海道の釧路にもオンラインでつながる生徒がいるという。

「オンラインを駆使すれば、場所に関係なく質の高い教育を届けることができる。地方部になればなるほど、片道何時間もかけて塾に通う生徒もいます。そのうちの1回をオンラインにするだけで時間のロスは減り、他のことに充てることができるようになる。私が思うに、現在のオンライン化は、必要に迫られて仕方なくオンラインにするネガティブな発想が根底にある。そうではなくて、ポジティブな視点を持ってオンライン化の可能性を探りたい。授業のオンライン化を考えるときに、ネガティブオンラインでは発展性が乏しくなってしまうと思うんですよね」

ともすれば、“あの先生のオンライン講義を受けてみたい”、そんな学習塾の未来が待っているかもしれない。商圏が関係なくなれば、競争は激しくなる。反面、講師のボトムアップや、場所を選ばずに生徒に教えられるため先生の働き方も変わるに違いない。

学習塾における学び方がバラエティ豊かになる――。そんな時代が訪れたとき、学校の役割はどうなるのだろうか? 現在の状況を考えれば、学校のオンライン化は待望である。が、冒頭の言葉しかり、知育、徳育、体育を教える学校の本質は、やはりオフライン抜きでは語れないような気がしてならない。

我妻 弘崇 フリーライター

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あづま ひろたか / Hirotaka Aduma

1980年北海道帯広市生まれ。東京都目黒区で育つ。日本大学文理学部国文学科在学中に、東京NSC5期生として芸人活動を開始する。2年間の芸人活動ののち大学を中退し、いくつかの編集プロダクションを経てフリーライターとなる。現在は、雑誌・WEB媒体等で幅広い執筆活動を展開している。著書に『お金のミライは僕たちが決める』『週末バックパッカー ビジネス力を鍛える弾丸海外旅行のすすめ』(ともに星海社)など。

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