世田谷区のとある駅前のバーは、看板の照明を消し、扉には「5月6日まで休業します」との貼り紙を出しながらも、常連向けにこっそり営業しています。「とりあえず協力金として50万円もらえるのはありがたい。でもお客さんが離れていったら、それこそアウト」とマスターの千葉さん(仮名)は切実に語ります。このバーだけでなく、郊外の飲食店は地元の常連客が財産。休業することでお客さんが離れていけば、たちまち死活問題に直面します。
多くの飲食店が休業したくても、休んだ場合の恐怖に怯えながら営業を続けているのです。
テイクアウトもデリバリーも簡単ではない
なんとか営業を続けたい。その策として、多くの飲食店が「テイクアウト」「デリバリー」に期待を寄せています。飲食店に特化したリサーチサービス「飲食店リサーチ」を運営するシンクロ・フードが4月3~6日に調査したところによると、52.7%の店舗が「テイクアウト販売を始める・または強化する」と回答しました。
しかしながら、慌ててテイクアウトに舵を切った飲食店には、立ちはだかる壁があります。「食品衛生法」などの法令がそれです。例えば「弁当」を販売する場合。作り置きして販売する場合には、対面販売であっても営業許可種目の中に「そうざい」「弁当屋」などを新たに追加する必要があるようなのです。必要な許可を得ないと販売を始められません。
ウーバーイーツをはじめとした宅配サービスも広がっています。しかし「もちろんデリバリーも考えましたよ。でもウーバーイーツなどに3~4割のマージンをとられるのはキツい」と、先述のレストランオーナー荒木さんはコストが見合わないことであきらめた模様でした。オンライングルメサービスを活用するにもコストはかかります。
テイクアウトにせよデリバリーにせよ、それなりの手間とお金が必要だとすると、体力のない飲食店には厳しい。これが現実です。
東京都内でワインバーなど数店舗を展開するある外食企業は、当面の間休業することを決めました。そしてアルバイト約50人に「4月分の給料は払えない。辞めてくれと頭を下げた」と取締役の代田さん(仮名)は明かします。
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