34万人透析患者がコロナ禍で神経すり減らす訳 重症化と集団感染のリスクあるが通院休めない

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さらに、病室を閉じるわけにいかないため医療従事者が勤務を続け、2次感染を引き起こす懸念もある。その懸念は、神戸市で現実になった。

4月上旬に院内感染が発生した神戸市立医療センター中央市民病院では、人工透析を受けていた患者も感染していたことがわかっていた。その後、同22日になって神戸市は、人工透析室で勤務する看護師2人の感染を発表した。この2人は本来なら自宅待機の対象だったが、代替要員が確保できず、防護服で勤務していた。専門性が必要な人工透析室では全員を自宅待機にできなかったため、2人は勤務に就いていたのだという。

「あの透析患者さん、亡くなりました」

話は再び、都内の病院に勤める看護師Aさんの実体験に戻る。

「よく言われるようにマスク不足なので、不織布のマスクでも洗って使っています。防護服は備えがありません。フェースシールドはアクリル板を切って手作りしました。看護師と同じか、それ以上に大変なのが看護助手です。今は水際対策で、エレベーターやテレビのボタン、トイレのレバーなどを1時間おきに拭いていて、手がしわしわになっています。消毒用のアルコールはまったく足りません」

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そして、「実は……」と言い、ある透析患者のことを教えてくれた。

「先日、ある透析患者さんに発熱があって。ときどき出る(新型コロナウイルスとは関係のない)症状だったのですが、対処できる設備のある病院に患者さんを送ったんです。すると、先方の病院がコロナ対応で手一杯になったので、すぐに出されてしまった。それから数日で、その患者さんは亡くなってしまいました。(送った先の病院を出されたこととの)因果関係はわかりませんが、それまで元気だっただけに、みんなショックを受けていました。同じようなことは、ほかでもあるのではないでしょうか」

取材:木野龍逸=「フロントラインプレス(Frontline Press)」

Frontline Press

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「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年5月に合同会社を設立して正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や研究者ら約40人が参加。スマートニュース社の子会社「スローニュース」による調査報道支援プログラムの第1号に選定(2019年)、東洋経済「オンラインアワード2020」の「ソーシャルインパクト賞」を受賞(2020年)。公式HP https://frontlinepress.jp

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