34万人透析患者がコロナ禍で神経すり減らす訳 重症化と集団感染のリスクあるが通院休めない

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どんなにリスクがあっても週3回の治療が必要となる(写真:Picsfive/iStock)

「透析中の患者さんが発熱したので、対応できる別の病院に送ったら、そこがコロナ対応で手一杯で……。その患者さん? 数日後に亡くなりました」

東京都内の病院に勤める看護師のAさん(50代)はそう明かした。新型コロナウイルス感染症の拡大がやまず、医療現場の混乱も続く。そのしわ寄せは、感染リスクの高い患者やそれらの患者を預かる病院に集まる恐れがさらに高まっている。

「感染疑い」の透析患者

Aさんの勤める病院は、透析患者を受け入れている。人工透析用の病室は、数十床の大部屋。もし、1人でも新型コロナウイルスに感染すれば、影響は一気に広がりかねない。

「どこの病院でも、透析はワンフロアにたくさんのベッドを並べて同時に行います。透析患者は透析中に症状が悪くなることがあるのですが、個室にすると変化が見えません。だから、もし感染者が出るとクラスターになる可能性が大きいんです」

「本当ならスチール板で仕切った個室を設けて見える状態にできればいい。でも、それができる病院は少ないでしょう。ベッドの間隔を空けたり、1つおきにしたりすると、ベッド数が減る。受け入れている患者数を考えると難しいと思います」

Aさんの病院では患者に感染者は出ていない。それでも、疑わしい透析患者は来たことがある。

「患者さんには『何らかの症状があるときは事前に病院に伝えて、指示を仰いでください』と言っているのですが、何の連絡もなく透析に来た人から『熱がある』と言われたんです。すぐに隔離して、レントゲンを撮って、周りをパーティションで囲って透析しました。病院側で事前に感染者を見つける手段はないんです」

Aさんの病院に来た“感染の疑わしい”透析患者はどうなったのか。

「肺に影があったので保健所にPCR検査を依頼したのですが、断られました。陽性が確定すれば、指定の病院に入院することになるのですが、『疑い』の間は自分たちのところで対処するしかない。4時間の透析中は、体温、脈拍、血圧、呼吸数などのバイタルチェックを1時間に1回行うので看護師らは頻繁に出入りします。このような状況でPCR検査をしないとなったら、どこでクラスターが発生するかわかりません」

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