「しかし」と菊地医師は言う。
「現状ではPCR検査ができるまで4日くらいかかっているため、(感染)疑いの間に2〜3回は自分たちの施設で透析をするしかありません」
日本透析医会は透析施設での対応について、個人防護のためのマスクやフェースシールドなどの着用の徹底のほか、ベッドを2メートル以上の間隔で配置し、カーテンなどで空間を隔離することなどを求めている。
「透析医療はもともと感染対策を厳しく実施しているので、これまでは感染爆発にならなかったと考えられます。ですが、今後は安心できません。透析患者の感染も徐々に増えるでしょう。全国的に体制を整える必要があります。既に一般の人の新型コロナウイルス感染が増えて、入院できる病床が埋まってきているため、先手を打って対策を立てるようにしています」
東日本大震災のときに起きた大混乱
緊急事態の際、透析患者への対応は常に大きな問題となる。
例えば、東日本大震災のとき、宮城県内には約4400人の透析患者がおり、透析可能なベッド数は239床あった。
『月刊ノーマライゼーション』2013年2月号に掲載された宮城県腎臓病患者連絡協議会広報部長の「その時透析患者は」によると、仙台市内のある病院では、「透析難民」が出ることを防ぐために透析ができなくなった患者らを受け入れると公表したところ、患者が殺到して大混乱に陥ったという。また、津波被害を受けなかった気仙沼市の病院では、道路が寸断されて孤立し、透析資材が1週間で底をついた。それでも、患者を北海道や東北の日本海側、関東など地震被害の少なかった地域の施設に振り分け、「透析難民」を防ぐことができたという。
ところが、コロナ禍の場合、そうはいかない。感染者は全国に広がっているうえ、感染者の多い地域からの「人の流入」を多くの地方が嫌っているからだ。
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