
14世紀に蔓延したペストのときのように、ポストコロナによって格差は是正されるのだろうか(写真:Warchi/iStock)
古代史を専門とするスタンフォード大学のウォルター・シャイデル教授は、著書『暴力と不平等の人類史 戦争・革命・崩壊・疫病』の中で、歴史的に不平等を是正してきたのは「戦争・革命・崩壊・疫病」という4つの衝撃だけであることを明らかにしている。
格差がかつてないほどに拡大している現代社会において、世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスは社会変革をもたらすのか。今回、『暴力と不平等の人類史』の「疫病」の章が無料公開されたのに合わせ、その一部分を抜粋・再構成しながら紹介する(無料公開期間は終了いたしました)。
14世紀のパンデミックの記録
2015年、地球上で最も裕福な62人は、全人類のうち貧しいほうから半分の人々(35億人あまり)の個人純資産と同額の富を所有していた。この億万長者たちが一緒に野外旅行に出かけることになっても、大型バスが1台あれば全員が楽に乗り込めるだろう。
だが、不平等を生み出しているのは超がつくような億万長者だけではない。世界で最も裕福な1%の世帯が、今や世界の個人純資産の半分あまりを保有しているのだ。
いま、世界の多くの地域で不平等が拡大しつつある。この数十年、欧州や北米、旧ソ連圏、中国、インド、その他の地域で、所得と富の配分はますます不均衡になっている。
この著しい不平等には極めて長い歴史がある。2000年前、ローマ帝国で最も裕福な世帯の私財は、1人当たりの平均年収のほぼ150万倍に達していた。これは、現代のビル・ゲイツと平均的なアメリカ人の財産の比率とほぼ同じである。
しかしこれまで数千年にわたり、文明のおかげで平和裏に平等化が進んだことはなかった。既存の秩序を破壊し、所得と富の分配の偏りを均(なら)し、貧富の差を縮めることに何より大きな役割を果たしたのは、暴力的な衝撃だった。
不平等を是正してきた暴力的破壊には4つの種類がある。すなわち、大量動員戦争、変革的革命、国家の破綻、致死的伝染病の大流行だ。
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