「緊急事態延長」で迫る「経済停止」が招く大問題 経済無視の短期戦では「国民の貧窮」は不可避

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働く側も、感染リスクが小さい者から働き始めます。新型コロナウイルスは、60歳以上の高齢層で重篤化・死亡のリスクが高く、若年層では比較的症状が軽微に落ち着く傾向があります。原則自由地域に住む現役世代には、高齢者や原則禁止地域の住人の分まで懸命に働いてもらいます。

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国には、長期戦の方針を明確に打ち出すとともに、企業・国民の前向きな経済活動を融資・補助金などで支援することが期待されます。

また、国によるビジネス・人材のマッチングも効果的です。たとえば、今回の危機で飲食業やホテル業では従業員が余っている一方、農業では、収穫作業を担っていた技能実習生が帰国し深刻な人手不足に陥っています。国が広域的にマッチングをすれば、事業継続と失業抑制が実現し、一石二鳥です。

「長期戦への備え」は待ったなし

歴史を振り返ると、一ノ谷の戦い、桶狭間の戦い、日本海海戦など、日本人が絶賛する戦いはいずれも短期決戦。逆に長期戦は、壬申の乱、応仁の乱、太平洋戦争など、グダグダと迷走する冴えない戦いばかりです。伝統的に日本人は、短期決戦を好み、長期戦は苦手なようです。

太平洋戦争で東条英機首相は、真珠湾攻撃でアメリカの戦意を喪失させて短期間で講和するつもりでした。しかし短期戦が決着せず、ずるずると長期の消耗戦になり、長期戦への備えがなかった日本は、経済力・国力の差でアメリカに敗れました。

太平洋戦争以来の危機といわれる新型コロナウイルス。太平洋戦争の過ちを繰り返さないよう、今こそ長期戦への備えを推進することが必要です。

※編集部注:本記事は2020年4月25日に執筆したものです。
日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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