コロナ禍の今こそ問われる「プロ野球の真価」

阪神の藤浪は世間から大きな批判を浴びたが

こういう状況になると「ノブレス・オブリージュ」と言う言葉が必ず出てくる。上に立つもの、持てる者は率先して救いの手を差し伸べるものだ、ということだ。

野球だけでなく、世界のトップアスリートは、自らの影響力を十分に認識して、社会のために情報発信しているのだ。

もちろん、日本も手をこまねいているわけではない。日本プロ野球選手会では、各球団の選手会長が呼び掛けて、クラウドファンディングで医療機関や団体などをサポートする基金に寄付を募っている。

プロ野球は社会の広範な支持と理解がなければ成り立たないのだ。スポーツ選手が、これまでの恩義に報いるときは今のコロナ禍ではないかと思う。

事ここに至っては、球団が選手に指示すべきは「家にいろ、そして自分で何をすべきか考えろ」ということに尽きる。

2011年、楽天の開幕戦で嶋基宏が言ったこと

2011年3月11日に起こった東日本大震災では、当時の日本プロ野球選手会長の嶋基宏(当時、東北楽天ゴールデンイーグルス、現東京ヤクルトスワローズ)のメッセージが、日本中を感動させた。4月29日、Kスタ宮城(当時)での楽天の本拠地開幕戦で、嶋はこう言ったのだ。

いまスポーツの域を超えた「野球の真価」が問われています。
見せましょう、野球の底力を。
見せましょう、野球選手の底力を。
見せましょう、野球ファンの底力を。
ともに頑張ろう東北! 支え合おうニッポン!

彼の言葉は日本中を勇気づけた。嶋には何の打算もなかったと思うが、それがNPB全体の社会的評価に好影響をもたらしたのは間違いない。その後、NPBの観客動員は増加し続けるのだ。

今回の新型コロナウイルス禍は、震災よりもはるかに複雑な災難で、その影響は甚大だ。しかし、だからこそ「励ましの声」が必要なはずだ。

今回も「スポーツの域を超えた『野球の真価』が問われて」いるのではないか。

藤浪晋太郎が感染に至った行為には批判が集まったが、怪我の功名がある。彼の発症時の情報発信によって、新型コロナウイルスの感染の兆候として「味覚、嗅覚の異状」があることを、世間に広く知らしめた点だ。

プロ野球は最短でも6月以降の開幕を目指しており、交流戦の中止とレギュラーシーズンの試合数削減が決まっている。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から無観客での開幕が想定されている。4月23日時点でも不透明感は増すばかりだ。

そんな中、巨人軍の選手・監督ら5人が医療現場に役立てるため、東京都に5000万円を寄付することが24日に発表された。

プロ野球選手は、今こそ「一日も早く野球ができる環境を回復するために、自分は何ができるのか」を考え、行動に移すべきだろう。

勇気ある声が、選手各々の判断で上がってくることを期待したい。

(文中敬称略)

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