新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行を受けた経済の混乱に伴って、原油先物価格が一時マイナスになるという、史上初めての事態が発生しました。これ以外にも、価値がマイナスになった事業がたくさんあるはずです。他方で、医療関連で著しい需要増が発生しています。
今は戦争と同じような状況なので、政府が資源配分に直接介入する必要が出てきています。ただし、そのために不可欠なのは、政府の正しい判断力です。
原油価格が史上初めてマイナスになった
4月21日、原油先物価格がマイナスになりました。
需要が急減し、他方で貯蔵余力が限界に近づきつつあるため、米国産標準油種WTIの5月物の終値が、1バレルあたり、マイナス37.63ドルとなったのです。
これは、売り手が買い手にお金を支払って原油を引き取ってもらう異常事態で、歴史上、初めてのことです。
マイナスになったのは、スポット価格(現物の価格)ではなく、5月渡しの先物価格です。
これは5月の価格の予測値ではないのですが、大まかに言えば、それに近いと言えます。
21日(この日が最終売買日)には、プラス圏を回復し、10.01ドルとなりましたが、取引が最も多い6月物は、11.57ドルと、大幅に続落しました(一時は、6ドル台)。
本来であれば、生産を縮小しなければならない事態ですが、さまざまな理由でそれが追いついていないのです。
先物取引とは、将来のあらかじめ定められた期日に特定の商品(原資産)を現時点で取り決めた価格で売買することを約束する取引です。原油は先物市場が整備されているため、価格がマイナスになったことがわかりましたが、ほかの財や事業の価格も、評価して見ればマイナスになっているものがあると思われます。
例えば、タクシーの客が減少すれば、タクシー会社が保有する車輌の価値は、維持費を考えればマイナスになっている場合が多いでしょう。つまり、金を払って引き取ってもらわなければならない状態です。
通常の自家用車であっても、価格がマイナスになっている(金を支払わないと、引き取ってもらえない)場合があるでしょう。
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