余る原油と足りないマスク「両極端」が示す警鐘 政府による正しい判断に基づいた介入が必要

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日本では、コロナ以前から、価格がマイナスになっている不動産は、珍しくありませんでした(「負動産」と呼ばれます)。

だから、原油価格がマイナスになるのは、ありうることです。とはいえ、経済を動かすための不可決な財である原油の価格が、一時的とはいえマイナスになってしまうのは、現在の異常な状況を象徴しています。

個々の財だけではありません。

企業の売り上げが急減しているので、維持費を考慮すれば、企業価値がマイナスになっている場合も多いと思われます。

ただし、株式会社には有限責任制の特権が認められているため、株価がマイナスになることはありませせん。

株式会社の実質的な価値がマイナスになっていることのコストは、融資者(金融機関や社債の保有者)が負うことになります。

つまり、石油産業などに融資をしている金融機関が打撃を受けるのです。それが金融不安につながる危険があるのが、恐ろしいことです。

こうした懸念から、株価が急落しました。

4月21日のダウ工業株30種平均は、前日比600ドル超の大幅安。22日には、日経平均株価が続落し、前日比142円83銭安の1万9137円95銭となりました。

多方で、需要が急増した財も

このように需要が激減している事業がある反面で、需要が殺到しているものがあります。

その典型がマスクです。

4月21日、シャープは、三重工場のクリーンルームで製造したマスクの販売をECサイトで開始しました。しかし、マスクを求める人が殺到し、サーバーがダウン。その影響でIoT製品までもが接続できなくなり、一部機能が使用不可になってしまうというトラブルに見舞われました。

マスクのほかにも、防御用ガウン、人工呼吸器、消毒用アルコールなどの医療機器や資材について、深刻な不足が続いています。

価値がマイナスになっている事業がある半面で、こうしたものもあるのです。

つまり、需給の極端なアンバランスが生じているのです。

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