余る原油と足りないマスク「両極端」が示す警鐘 政府による正しい判断に基づいた介入が必要

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休業要請のために価値がマイナスになった事業に対しては、政府による補償が必要です。

他方で、供給不足になっている財やサービスについては、政府による生産介入が必要です。なぜなら、全体としての生産能力には余裕があるからです。

本来であれば、こうした調整は、価格によって行われます。

ところが、あまりに急な変化なので、価格メカニズムによる調整が追いつかないのです。したがって、政府が介入して、生産パターンを変える必要があります。今の経済情勢は戦時と似ており、政府による物動計画や指令生産が必要とされる側面があるのです。

実際アメリカでは、トランプ大統領が、3月27日、ゼネラル・モーターズ(GM)に対し、人工呼吸器の生産を命令しました。これは、1950年の朝鮮戦争下に成立した「国防生産法」に基づくものです。

日本では、「新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下、特措法)」によって、次のようなことは可能です。

・臨時の医療施設を開設するために土地・建物を使用できる
・企業などに医薬品や食品など物資の売り渡しを「要請」できる
・医薬品や食料品の生産、販売、輸送業者らへの売り渡しの要請が可能

いずれについても、同意が得られない場合は強制的に「収用」できます。

しかし、日本の場合には、生産命令はできません。

したがって、日本では、要請ということになるでしょう。

厚生労働省は、人工呼吸器の増産のための規制緩和や協力要請を呼びかけています。ソニーが生産協力を検討しています。

政府の正しい判断が不可欠

労働力についても、政府の介入が必要です。

旅行、観光、航空などの分野で労働力が余って失業が発生し、他方で、医療で深刻な労働力不足が生じています。

そこで、規制を緩和し、政府が介入して、緊急で労働力を再配置することが望ましいのです。

ただし、政府が資源配分に直接に介入するために不可欠なのは、政府が正しい判断と指導力を持つことです。

「マスク2枚を配れば、国民は安心するだろう」程度の判断では、困るのです。

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