アメリカ、カナダ、メキシコの消費者支援を担う米非営利団体の商事改善協会は、アメリカ政府や内国歳入庁を装い、個人情報や金銭を盗むサイバー攻撃について、市民から相談を受けている。攻撃者が連絡手段として使っているのは、フェイスブックやインスタグラムなどのソーシャルメディアやショートメッセージだ。メッセージ内のリンクをクリックして、個人情報と銀行口座情報を入力しなければ、小切手が受け取れないとうそをつく。
しかし、アメリカ政府も内国歳入庁も、ソーシャルメディアやショートメッセージ、電話やメールでそうした個人情報を聞くことはない。ましてや、政府が小切手の発行のために手数料の支払いを国民に要求するなどということはありえない。
そのほかにも、ソーシャルメディアを使って、アメリカ市民をだまし、「米緊急助成金連盟」という架空の組織の偽ウェブサイトにアクセスさせる手口も報告されている。この偽ウェブサイトを見ると、「助成金を受け取る資格があるかどうか確認するため、社会保障番号を入力してください」との趣旨の記述がある。商事改善協会は、「該当する政府機関や組織が実在するかどうか、まず自分で調べてほしい」と注意を呼びかけた。
観光名所をコロナ対策資金のため売却?
インドでは、3月上旬から4月上旬にかけてサイバー犯罪が86%増加した。例えば、モディ首相が新型コロナウイルスなどの感染症と闘うため、3月28日に設立した市民援助・救援基金もサイバー犯罪に悪用されている。この基金は、10ルピー(約14円)から少額の寄付も受け付けているが、設立が宣言されてからわずか数時間以内に、似たような名前の偽のウェブサイトが複数作られた。
そうした人々の善意を踏みにじり、金銭を盗むサイバー犯罪は、インド政府のほか、国内の銀行も24時間態勢で監視している。偽のウェブサイトを見つけ次第、被害を防止するためブロックしているという。
観光名所を使った詐欺も登場した。モディ首相の出身州であるインド西部グジャラート州には、米ニューヨーク州の自由の女神(93メートル)の2倍も高い世界最大の彫像「統一の像」(182メートル)がある。ネルー初代首相の下で初代副首相を務めたサルダール・バラブバーイー・パテルの功績を讃え、2018年に完成した。
ところが、あろうことかこの統一の像をダシに使ったオンライン詐欺広告が中古品マーケットプレイスの「OLX」上で見つかったのである。グジャラート州が新型コロナウイルスと闘う資金源とするため、なんとこの像を40億ドル(約4400億円)で売りに出したという大胆不敵な筋書きだ。偽広告には、「緊急! 病院や医療機器のための緊急資金として、統一の像を売ります」との文字が踊った。
こうした詐欺が悪用したのは、新型コロナウイルス感染拡大への不安と逼迫する医療に対する危機感だけではない。統一の像の建設には4億3000万ドル(約473億円)を要し、グジャラート州政府がその半分以上を負担したことへの地元住民の不満にもつけ込んでいると見られる。
グジャラート州の65%は農地であり、綿花、サトウキビなどが生産されている。しかし、灌漑のための水路が整備されていないため、雨季の降水に頼りがちな農家は、近年の干ばつに苦しめられてきた。統一の像が建設される際、同州の農家や住民たちは、建設予算を農家支援や公衆衛生の向上に使うべきだと反発している。
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