部数激減「ヤバい新聞」と「生き残る新聞」の差 発行停止や解雇に踏み切るイギリスメディア

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しかし、「支援の手」は思わぬところからやってきそうだ。グーグルは4月半ば、世界の中小規模のメディアに対し、「ジャーナリズム緊急支援ファンド」を提供すると発表。どの程度の資金を提供するかは明らかにしていないが、ガーディアンによると、「イギリスのメディアに対しては数万ドル規模を提供する」見通しだという。

一方、イギリスのジャーナリストの労組「NUJ」は、16日、質の高いジャーナリズムを維持するため、「新復興計画」案を公表。グーグル、アップル、フェイスブックなどのテクノロジー大手に課される「デジタルサービス税」の一部をこの計画の原資とすることを提案し、コロナ報道をするジャーナリストに税金優遇措置や無利子の貸し付けを行うよう求めた。

公益のためのジャーナリズムへの投資、18歳と19歳に向けてオンラインあるいは紙版の新聞購読ができる無料クーポンの配布なども案に入れている。

FTやガーディアンはデジタル化が奏功

現時点で比較的”軽症”ですんでいるのは、デジタル化が進んでいるメディアだ。例えば、左派リベラル系全国紙インディペンデントを発行する、インデペンデント・デジタルニュース・メディアも、一時解雇措置を取っていない。インディペンデントは2016年に紙版が廃止され、電子版のみとなっていることが功を奏した。

景気の動向によって上下する広告収入に左右されない経営を目指したフィナンシャル・タイムズは、電子版購読者の開拓に力を入れ、その有料購読者は100万人を超えている。デジタルサービスによる収入の比率は全体の3分の2を占める。

無料でウェブサイト上の記事の閲読ができるガーディアンも、電子版に投資を続け、現在は電子版からの収入が印刷版から生み出される収入を超えている。

コロナ危機は、イギリスの新聞界が「電子版へのプッシュ」をさらに推し進める起爆剤となっているようだ。1カ所に大勢の人が集まって紙面を作り、高額な印刷機械を使って印刷し、大規模な配布体制を通じて読者に届けるという紙の新聞製作体制が終焉を迎えるのか。

今回の危機の収束はワクチンが実用化される1年半後、あるいは2〜3年後と言われている。そのときには、新聞ビジネスは今とはかなり異なったものになっているのかもしれない。

小林 恭子 在英ジャーナリスト

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こばやし・ぎんこ / Ginko Kobayashi

成城大学文芸学部芸術学科(映画専攻)を卒業後、アメリカの投資銀行ファースト・ボストン(現クレディ・スイス)勤務を経て、読売新聞の英字日刊紙デイリー・ヨミウリ紙(現ジャパン・ニューズ紙)の記者となる。2002年、渡英。英国のメディアをジャーナリズムの観点からウォッチングするブログ「英国メディア・ウオッチ」を運営しながら、業界紙、雑誌などにメディア記事を執筆。著書に『英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱』。

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