コロナ禍で見えた「日本人の原始的な働き方」 総理に直談判した働き方改革のサードドア
目下、新型コロナウイルスで大変な状況にありますが、それで動き出したこともあります。例えば長らく「セキュリティーの問題でWEB会議はできません」と言っていた会社が、今回急にWEB会議を導入し、20年以上議論されても進まなかった遠隔医療が実用化に向かい、法整備が始まりました。
書類の体裁や何段階もの決済プロセス、長すぎる会議など、くだらない商習慣にこだわってきた人々も、コロナとの戦いによって、「これじゃ負けるよ」と、これまで超えられなかった壁を一斉に飛び越えはじめているのです。
リーマンショックの時も危機的な状況になりましたが、誰もが「元に戻りたい」ということしか願わず、従来の仕事の習慣などについては見直しをしませんでした。結果、景気が復調したあとは、以前以上の労働力人口不足によって、ますます長時間労働になりました。
今回は、今までできなかった「仕組みの変更」に着手して、より少ない労働人口で成立する社会を目指すこと。変えるべき本質は、ITツールの変更ではなく、商習慣や働き方の変更にこそあるのです。
緊急時だからこそ、今までしなかったことを試してみることができる。いまは大変な時ですが、これは変化へのチャンスだと思います。
今まで当たり前だと思って、最も見直されなかったこと。それが長い通勤時間です。埼玉県から東京都内に通勤している女性は、夕方6時に保育園のお迎えがあるために、午後4時半に退社していましたが、在宅勤務なら実は6時直前まで働けます。通勤のために短時間勤務になっていた女性が、在宅勤務のおかげでフルタイムに戻れるのです。
在宅勤務のメリットは女性に限りません。朝夕合計3時間もかけて通勤していた人は、その時間を省いて、フルタイムで純粋に会社に提供できるようになります。見方を変えると、会社組織は通勤なんかにこだわって、毎日3時間分の労働力を逃していたのです。年間600時間。3か月分の勤務です。
「全員がオフィスにいることが大事だ」という価値を優先するあまり、素晴らしい労働力を無駄遣いして、通勤で疲れさせて、さらに交通費まで支払っていた企業は、いわば資源をドブに捨てていたわけです。
意思決定層に女性を登用する利点
オフィスへの通勤にこだわれば労働力の無駄遣いになるという点は、子育て経験のある女性ならばすぐ理解できることだと思いますが、なぜそれが変わらなかったのかと言えば、企業の意思決定層に多様な事情を抱える、多様な価値観の人がいなかったからです。
「いざというときに時間外勤務も辞さないという人でなければ重要な任務は担えない」。そんな、働き方の門前払いがあったことで、せっかく現場には男性も女性もいるのに、管理職まで生き残るのは男性ばかり、意思決定はほぼ男性。
たまに女性がいても、それは育児をアウトソーシングし、24時間働けますという「踏み絵」を踏んだ人だけだったりする。これでは、意思決定層を多様化させて、今までとは違う意思決定をすることなどできません。
今、ウイルスとの闘いの中で、各社の経営者が例外なく在宅勤務できる体制をどう指示するかが問われています。今こそ、働き方の門前払いをやめて、多様な人材を意思決定層に取り込み、斬新な挑戦で社会としての「サードドア」を開けるべき時でしょう。
(構成/泉美木蘭)
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