コロナ禍で見えた「日本人の原始的な働き方」

総理に直談判した働き方改革のサードドア

2012年に世界的なプレゼンカンファレンスであるTEDのスピーカーに選出されたのも、人との「縁」を大切にしてきたおかげでした。

ボランティアで16年間続けているプレゼン講座にある時突然飛び込んできた高校生がいました。プレゼンだけでなく、人生の悩み相談などにいつものっていたのですが、それから何年も経っていつのまにかその青年はTED Japanの事務局のメンバーになっていたのです。

スピーカーとして各界の一流著名人がリストアップされる中、「日本でプレゼンと言えば僕の師匠のYoshie Komuroですよ」とちゃっかり推薦し、スピーカー候補に私がノミネートされたのです。ボランティアを続けてきたことが、こんなチャンスにつながるとは驚きでした。

さらに、私の長年のメンターが最終選考の面接官の親友だったという奇跡が重なって、私より熱く、私の実績について語ってくださり、最終選考のハードルも無事通過し、TEDスピーカーになれたのです。当日の動画は100万回再生を超え、働き方改革にアンチだった層にも急速に浸透しました。

ここ最近、そんなふうに、思いも寄らないところから、何かががつながっていくという経験を多くしています。今日明日を一生懸命生きることが、いつか何かの縁につながり、それこそが運を引き寄せるのだなと思います。

長時間労働からの解放が人を育てる

『サードドア』は、失敗の連続の中で若者が成長していく物語だと思いますが、日本においては若者が失敗を恐れて行動しないとよく言われます。

でも、私はその原因の1つが長時間労働社会だと思っています。ベテランは若手が育たない、育たないと言うけれど、ご自身が若かかったころは、社会全体にゆとりがあって、かなり失敗しながら成長するチャンスをもらっていたんです。

それが、長時間労働によって「自分の仕事で手一杯」という人を大勢生み出して、若い人に関わってあげたり、育てる心を持つ余裕を犠牲にしてきました。

労働時間削減と聞くと、生産性が落ちると思われがちですが、実際には、一番犠牲になっている「育成」の時間を取り戻すことで、若者の成長が促進されて、離職が減り、生産性があがる。社会全体としてはプラスが大きいのです。

弊社では、若手でも半年ほどで最前線に出て、お客さんの前に立ちます。20代後半の子が、40代の部長クラスの方々の研修を堂々と担当し、好評を得ています。

肝心なことは、「自分の時代はこうだったのに」ではなく、自分とは違うタイプの人を育て、マネージメントの幅を広げる努力。そのためには、育成に向き合う心の余裕と、多様なタイプに対する指導方法を勉強する時間が必要です。

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