コロナ禍で見えた「日本人の原始的な働き方」

総理に直談判した働き方改革のサードドア

その時は全身全霊でプレゼンをしました。するとひと月後、大きな経済会合で300人ほどが出席していた会場で、その政治家が私を見つけて「小室さん、先日の話はとても重要な話だった。安倍総理にアポを取れる方が今会場にいるから、今からその方に話を聞いていただこう」と、引き合わせて下さったのです。

突然のことでしたし、それはほんの数分の出来事でしたが、そこでも必死でプレゼンをしました。話し終わると「総理の時間をもらいましょう」と言われ、2か月後に実現したのです。

「今の働き方のままではこの社会が持たない」ということを考え続け、語り続けた結果、インサイドマンが現れて「それは伝えるべき人がいるから、行こう」とパスをつないでくれた。一つひとつの人とのつながりは本当に大きなものだと思います。

チャンスを活かすための徹底練習

『サードドア』で運について触れた箇所に「準備しておくことだ」とあるように、私は、一つひとつの人との縁をおろそかにせずにいることが運になると思っていますし、いざという時にその運を生かすために、日頃からプレゼンの訓練をしていたことが活きました。

チャンスが降ってきたその時に、自分にどれくらいの時間が与えられるかなんて、その時になってみなければわからない。だから10分バージョン、5分バージョン、2分バージョン、スライドがある時、ボディランゲージだけでやる時など、パターンを分けて練習していました。そのおかげで突然のチャンスを生かせたのだと思います。

安倍総理との面談は、当初5分だけと言われて準備していきました。2100年には日本の人口は現在の4割になり、そのうち41%は高齢者になる。団塊ジュニア世代の出産期間が終わるまで、あと数年。母体数が一番多いまさに今、働きながら子育てできる社会を作らなければ、この国を財政破綻から救うことはできない――そういったことをさまざまなデータとともにご説明申し上げました。

総理は熱心に聞いて下さり、5分だったはずが結果的に25分のお時間をいただきました。総理からは「要するに、小室さんはどうしろと言うの」との質問をいただき、僭越だとは思いつつ、自分で書いた労基法の改正案もお見せしました。

三六協定の上限を何時間にすべきで、そのためには第何条、何項をこのように書き換える必要があるということを、現在の条文に赤字で書き入れたものを用意していたのです。5分だったら話しきれないけれど、もし時間を延ばせたら話そうと思って準備してきたスライドでした。

総理は「2~3年の議論を要する話だ。あなたはずいぶん大きなことを言うね」とおっしゃいました。その反応を見て「玉砕したか……」とその日は落胆して帰りました。

ところが、結果的には総理からむしろ提言した以上の策が出されました。それが、新たに特命大臣として働き方改革担当大臣を設置することでした。しかも、就任されたのは総理の懐刀とも言われる加藤勝信さん。総理の本気度に驚きました。

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