風車がゆっくりと近付いてくる。沖からの風を受け、陸側から見ると反時計回りに回っている。このあたりの海域の平均風速は時速約7キロで、大体今日くらいだと、風車は1分間で17回転する。ゆっくりに感じるかもしれないが、風車はとにかく大きい。海面から最も高いところまでが105メートル、3枚ある羽(ブレード)の長さは40メートルもある。
ブレード先端部分の移動速度を計算すると、1分間で40掛ける2掛ける3.14を17倍すると、分速4270メートル。つまり時速256キロ。新幹線級である。さすがにこのスピードでは鳥も避けきれないという。しかし、今のところ、バードストライクなどの事故は観測されていない。
その風車から目視で2キロほど離れたところには、サブステーションがある。どちらも、とても浮いているとは思えない。乗っている船のぐわんぐわんという揺れと比較すると、海底から屹立しているように見える。
ふと船内を見ると、同行者たちの顔は土気色をしていた。復路ではリュックに忍ばせたポケット瓶のサントリー・レッドとチーズちくわなどで親交を深めようと思っていたのだが、予定を変更し、iPad miniでのゲームに没頭することにした。
10年先を行っている浮体式洋上風力の技術
振り返ってみると、2000年頃まで、日本は世界の風力発電を牽引していたが、2000年にドイツが再生可能エネルギーを固定価格で買い取り始めると欧州勢が勢いを増し、相対的に日本の存在感があれよあれよという間に弱まってしまった。
ところが、この福島沖での実験が始まるとなると、国内各社から手が挙がった。技術はその出番を虎視眈々と狙っていたのである。この浮体式洋上風力の技術は、10年先を行っていると言われている。雌伏の時を経た今こそ、是が非でも日本から世界に打って出てほしい。
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