世界初「浮体式風力発電」の秘密 船に乗って、福島県沖の発電所へ行ってみた!

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丸紅の泉井さん

この時間を利用して、ご案内役として丸紅からやってきた泉井敦さんに話を聞く。泉井と書いてワクイさんは、この実証実験のために丸紅に呼ばれたという風力発電の専門家。普段は遠隔で管理を行い、3日に1回ほど、現地へ確認に訪れる。

数ある洋上風力発電システムの中でここの最大の特徴はと尋ねると、陸から20キロメートルほど離れていることだという。

風力発電用の風車は通常、山の上や沿岸部などに建っていることが多い。そこを風が通るからだ。ところが、福島の沿岸部は風が少ない。風を求めて場所を探したら、洋上になった。洋上なら、騒音問題も解決する。山にあたって風が乱れることがなく整流されているため、発電効率がいい。特にこの海域にはかつて磐城沖ガス田があった関係で、地盤調査のデータも揃っていたという。

様々な技術的チャレンジが試みられている

しかし、福島沖の洋上ならではの問題もある。まずは海の深さだ。水深が5メートル程度までならば基礎を設置して工事を進められるが、このあたりの水深は100メートルを超え、基礎工事は現実的でない。そこで出た結論が、浮体式、つまり浮かすということだった。

風車だけでなく変電設備も海に浮かべ、それらの間を、埋設せず海中に浮遊させるライザー電力ケーブルで結ぶタイプの浮体式洋上ウィンドファームは世界初である。なぜ世界初なのかというと、新技術を開発しなければならないため、世界が避けてきた手法だからだ。

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浮体サブステーション

ここでは、様々な技術的チャレンジが試みられている。たとえば、浮体サブステーションは、水面上の高さが61メートルに対して、喫水が50メートルもある。船の世界にはパナマックスという言葉がある。パナマ運河由来の言葉で、要するに、パナマ運河を通れる船はこのサイズという標準を示すものだ。そのパナマックスの喫水は12メートル。コンテナや穀物などを運ぶ巨大船でもこのスケールなのに、50メートルというのはどうしたことか。しかし、従来型の浮体では喫水が100メートル近く必要だったという。今回採用されたジャパン マリンユナイテッドのアドバンストスパー浮体技術で、それが半分近くになったのだ。

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