今の日本社会でいちばん家計が苦しいのは、子どもを抱えて母親のみが働く、母子家庭です。「4年制大学を卒業して、条件のいい大企業に就職し、外見も磨いて、晴れてステキなパートナーを見つけ、夢の専業主婦生活!」という人の3分の1が離婚すると考えると、事態の深刻さがわかっていただけるでしょうか?
「結婚する前から、夢まで壊すな!」と言われれば謝るしかありませんが、「結婚すれば何とかなる」という人生設計は、少なくとも現在の日本社会にあっては、男女の平等といった話以前に、純粋に人生のリスク管理の問題として、危険きわまりないのです。
専業主婦世帯というのは、夫の稼ぎの多い世帯に集中しており、離婚をすると、そういう恵まれた経済環境から、一気にもっとも経済的な困難を伴う母子家庭に突入します。
もしくは、逆にその経済的なギャップゆえに、相手への不満や鬱憤を飲み込みながら、不本意な結婚生活を続けるのかもしれません。「あのとき仕事を辞めずにいたら、どうなっていただろう」などと、心の奥底で澱のように揺らぐ気持ちを抱えながら……。
離婚にまつわるシビアなおカネの問題
実は、離婚打率は、失業率と相関関係を持っています。都道府県別の離婚打率と失業率を見ると、正の相関が見られるのです。
私はそれを見ながら、「何だかなぁ……」と思ってしまいました。失業してしまい、経済的に厳しいときこそ、2人で暮らしたほうが節約できるはずです。
ところがこのデータを解釈すると、2人で苦境を乗り越えるというよりも、給料をもたらさない男性というのは、見捨てられる確率が高いことになるのです。女性が収入を補填するという方向には働かずに。(もっとも、失業しても家事すらしない男性も多いんでしょうが……)
日本は世界一離婚のしやすい国のひとつで、当事者2人の署名捺印と証人の署名があれば、裁判手続きなどは一切なく離婚をすることができます。離婚の9割は、この「協議離婚」です。残りの1割が当事者双方の合意がない場合で、裁判離婚(=調停や審判などでの離婚)になります。ちなみに、近年、このケースの約7割が、妻側からの申し立てです(『司法統計年報』より)。一方で協議離婚は、親権の帰属さえ決めれば、子どもの養育費の支払いをどうするかについての法的な裏付けすらとることなく、簡単に離婚ができることを意味しており、結果として母子家庭の貧困が放置されます。
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