日本の「家づくりの常識」が「30年遅れ」な理由 人気建築家が教える理想の住宅を建てる方法

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そして、今では百貨店で下見をしてから、同じものをネットで安く購入することが普通になりつつあります。もう消費者からしてみれば、同じ商品、あるいは似たような商品であれば百貨店である必要はまったくなく、ネットのショップでも十分なのです。

私は、こういったムーブメントが建築界で起きてもおかしくないと思います。実際、一部の設計事務所ではCM(Construction Management)分離発注方式で、価格構成を見える化し、住宅を提供しています。これは、大手業者にはない強みだと思っています。一生に一度の高価な買い物ですから、よほど経済的に余裕のある人でない限り、住宅の価格構成に無頓着でいることは損だと思うのです。

衣・食・住の「住」だけが立ち遅れている

ところで、先進国の中で一戸建てを自分で建てて住むというかたちをとっている国は、あまりありません。ヨーロッパ諸国ではよほどの富裕層でないとできないのです。アメリカも一戸建てを自分で取得するというスタイルではありますが、日本と違い、建売住宅産業や、デベロッパーの市場が整備されていて、自分たちの生活レベルの変化に応じて一戸建てを買い替えていくというかたちをとっています。

一方、日本の場合は、自分一代で自邸をつくり上げるというのが主流になっています。戦前は、農村社会であったため、村中の人の負担で家をつくってくれました。今の家はほとんど世帯主の収入だけで建てることになるので、その負担は昔よりもはるかに大きくのしかかってきました。

しかし、日本に限らず、欧米の大都市も住宅が高くて、住宅取得には日本と同じように負担がかかるのではないかと思われます。確かにそうですが、取得後の住宅の価値が日本と欧米では異なるのです。

日本では住宅の価値は購入時がマックスでその後はだんだん価値が下がる一方なのに対し、欧米では、住宅は購入時から価値が下がらないどころか、メンテナンスやDIYを施し、付加価値を高めて価値を上げることが往々にしてあるのです。ですから、高額で取得しても転売が容易ですから、住宅取得の負担は日本よりも軽いのです。

日本は住宅の取得に負担がかかるため、少しでも安上がりな仕上げを使おうとした結果、だんだん価値が下がる住宅になってしまっているのです。これは戦後の住宅の特徴ですね。

今も残っている戦前の個人の邸宅は上質につくられていて、今なおその存在感は色あせておりません。それに引き換え、今の住宅は量産されたプレハブ住宅が多く、上質とは縁遠いものも少なくありません。

では、少しでも安く上質な住宅を建てるにはどうすればよいのでしょうか。それは、個人個人が住宅にもっと興味を持つことだと思います。

衣・食・住の「衣」と「食」は日本においてはかなり成熟していると思います。「住」だけがかなり立ち遅れているのです。立ち遅れてしまった原因は、先ほど述べたように、住の経済的負担が重いということもありますが、一般人が住について学ぶ機会が皆無に等しいからだと思っています。

例えば「住」の先進国北欧では、小学校の高学年から建築の教科書があります。そこには絵が主流ではあるけれど、図面の読み方、描き方、家具の種類、電気のコンセントなどが載っています。家のことだけでなく、都市や風景といった大きい部分でも調和を考える授業があります。

北欧だけでなく、その他の先進国でも、女子は、インテリアコーディネーション、カラーコーディネーション、家具、照明、ファブリックについて学び、男子も家の修理や、ペンキの塗り方、電気器具の修理の仕方、ハウスメンテナンスなどについて学びます。

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