世界の経済危機を救うには「共同行動」が必要だ ノーベル賞学者スティグリッツの強い政府論

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経済学者は過去50年の間に、社会的目標を確実に達成するためには何らかの共同行動が必要であり、市場の力だけに任せていては効率的で公平な成果は生まれないことを理解するようになった。

本書でも、社会の利益と個人や企業の利益が一致しない場合が多々あることを繰り返し述べてきた。例えば、規制がなければ、企業は汚染のコストを考慮しようとしない。市場だけに任せておくと、汚染や格差や失業は過剰なほど増えるが、基礎研究はまるで進まない。

国防のように、誰もがその恩恵を受けられるものがある。これは「公共財」と呼ばれ、社会全体に提供されなければならない。だが公共財を民間の提供だけに頼っていると、供給不足に陥る。個人や企業は私的な利益のみを考え、社会的な利益まで広く考えようとしないからだ。

国防はきわめてわかりやすい例だが、公共財はほかにもたくさんある。稲作社会が優れた用水路インフラの恩恵を受けているように、私たちは誰もが、道路、空港、電気、水道、下水処理などの高品質インフラの恩恵を受けている。

発展する知識もまた、公共財である。知識の発展は、生活水準を向上させるきわめて重要な要素になる。トランジスタやレーザーといったイノベーションがいい例だ。だからこそ、基礎研究には政府の出資が必要になる。

中でも忘れてはならない重要な公共財が、効率的で公平な政府である。私たちは1人残らず、この公共財の恩恵を受けている。優れた政府を実現するには、公益に従事する個人や機関(独立したメディアやシンクタンクも含む)への公的な支援が欠かせない。

活力に満ちた経済はつねに変化しており、市場の力だけではこの変化にうまく対応できない。また、巨大化・複雑化した経済をまとめるのは難しい。これらいずれの問題にも、政府の介入が欠かせない。そこに議論の余地はないはずだ。

しかし、政府がこれらの問題にどう対処すればいいかとなると、話が難しくなる。一部の分野では、民間企業よりも政府が行ったほうがはるかに効率がいいことが証明されている。例えば、社会保障制度を通じた年金の給付や、メディケア〔高齢者や障害者向けの公的医療保険〕を通じた医療保険の提供などである。

ますます必要とされる政府

21世紀の経済は、20世紀の経済とはまったく違う。アダム・スミスが『国富論』を書いた当時の経済とは、それ以上に大きく異なる。そのため政府は、以前よりもはるかに大きな役割を担わなければならなくなった。以下に挙げる現代の経済の6つの特徴それぞれにおいて、これまで以上の共同行動が求められている。

【イノベーション経済】知識の生産は、鉄鋼などの一般商品の生産とは違う。市場の力だけに頼っていては、基礎研究に十分な資金がいきわたらない。基礎研究はあらゆる進歩の源泉である。だからこそ政府はこれまで、少なくとも基礎研究への投資では中心的な役割を果たしてきた。

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