40代で「うつ」にならない人のちょっとした習慣 誰にでもできるうつを寄せ付けない方法
「要は、人間は不完全な存在だということ。誰でも失敗するし、見栄も張るし、ストレスに押しつぶされそうにもなります。そういうアホな存在だということを認めると、心の中の葛藤が減り、素直になれるのです。あなたも『アホやなぁ』とつぶやいてみてください。肩の力がスーッと抜けますよ」
うつ発症から治るまでの期間を、川村さんは“冬”から“実りの秋”までの5段階に分けている。
例えば“冬”は最もつらい時期。うつの9症状のうち5つ以上に該当し、仕事や家事もできず、「本当に治るの?」と悲観的になりがちだ。このとき、脳内では多くの神経細胞が炎症によって死滅し、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質も非常に少なくなっている。
“初夏”から“夏”にかけて気をつける
川村さんは、このような状態を“田んぼ”にたとえる「田んぼ理論」を提唱している。「脳を田んぼに置き換えて考えると、複雑な脳の中の状態が理解しやすいのです。“冬”は田んぼが荒れて、稲、すなわち神経伝達物質を作れなくなった状態ですから、助っ人の力を借りて田んぼを復活させます。この助っ人に当たるのが、薬や運動、心理療法といった治療なんですね」(川村さん)。
田んぼは治療とともによみがえり、最終段階の「実りの秋」には稲がたわわに。ここまでくると治療が完了する。
治療内容は各段階で変わり、“冬”は抗うつ薬の服用が中心。その効果を実感し始める“春”からは、歩く運動療法も加える。「運動をすると神経細胞の回復を促す『BDNF(脳由来神経栄養因子)』という物質が増えます。家事に励むのもいい運動に。光を浴びることもおすすめです」(川村さん)
また調子がよくなる“初夏”から“夏”にかけては、考え方や行動の仕方を修正して、うつになりにくい自分を作る心理療法にも取り組む。
実は5段階の中で最も危うい時期が“初夏”だとか。症状が消えて「もう治った」と勘違いしやすいためだ。「この時期は急性期が終わっただけで、まだ完全回復には至っていません。薬をやめると“冬”に逆戻しやすいので気をつけて」と川村さん。
自分の今の状態とやるべき治療を確認することが、「実りの秋」、すなわちうつ卒業への第1歩なのだ。
【監修】
川村則行(かわむら のりゆき)/川村総合診療院院長。1961年生まれ。東京大学医学部医学科卒業。同大学院博士課程(細菌学)修了。国立精神・神経センター心身症研究室長などを経て、2011年開業。臨床分子精神医学研究所所長。近著に『うつ病は「田んぼ理論」で治る』(PHP研究所刊)
(取材協力:佐田節子)
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