《中国・アジア市場攻略》現地企業と組むダイキン、核心技術を渡しエアコン世界一を狙う
ダイキンは1995年に中国進出して以降、他地域と同様に、まず同社の強みである業務用エアコンを軸に展開してきた。沿海部の大都市などで順調に設置台数を増やし、ビル用マルチエアコン(一つの室外機で複数の室内機を管理できる業務用エアコン)では50%強のシェアを持つ。
好採算の業務用エアコンを伸ばした結果、今や中国市場は同社の稼ぎ頭になっている。中国の売上高は1564億円(08年度、全社売上高の13%)にすぎないが、営業利益率は約20%にも達する。実に全社営業利益の4割以上を中国でたたき出しているのだ。
もっとも、ルームエアコン市場でのシェアはほとんどない。中国ではルームエアコンは、エネルギー効率に応じて5段階の等級がつけられている。最上級の「1等級」が価格にしておよそ5500元(約7万円)、最下級の「5等級」が価格3000元(約4万円)未満。ダイキンはこれまで、「2等級」と呼ばれる5000元(約6万5000円)クラスの高価格製品を中心にそろえ、「品質のよいメーカー」とのブランドイメージを確立してきた。だが、圧倒的なボリュームゾーンである「4等級」(3000元、約4万円クラス)以下の低価格帯は、格力などの現地メーカーが席巻している。
高度な技術を持ちながら高価格製品だけの品ぞろえで、富裕層にしか浸透できず苦戦する他業界の日系企業は多い。ダイキンは今後中国で販売を伸ばすために、同じ轍を踏むわけにはいかない。その意味で、今回の提携効果は計り知れない。
ダイキンが格力との共同開発により10月に発売したのは「3等級」の製品。続いて、12月には「2等級」製品を投入する。そして来年春、いよいよボリュームゾーンの「4等級」製品を投入する計画である。これまではコスト面がネックとなり攻め込むことができなかったゾーンだが、提携で生産コストを低減したため、利益を出せるようになった。
環境規制の高まりという追い風もある。中国政府は電気製品の省エネ化を急いでおり、高効率のエアコンには補助金を支給する。一方でエネルギー効率の低い製品は販売を停止する方向。格力が日本メーカーにインバーター技術の提供を求めた背景には、この規制強化があった。
ところが、である。格力も当然のごとく、共同開発製品を自社ブランドで投入する(それぞれの拠点で生産し、価格設定もそれぞれ違う)。「ライバルというのもおこがましい。ケタ違いの販売力がある」とダイキンの中国スタッフが認めるほど、中国全土に販売網を巡らせる格力が同じ性能のエアコンを売り出せば、太刀打ちできないのではないか。