ホンダが2輪で挑む部品調達の大改革
実際、中国、インド、アジアでは現地調達率100%を達成。それを今後は、「10万円のバイクなら8万円分の部品はグローバル調達にし、2割を地場で買う」(山下常務)というのだ。せっかく上げたものを下げようとする“変心”の背景には、山下常務自身の危機感があった。
購買一筋だった山下常務は2006年に熊本製作所長に就任。その直後から強い焦慮に駆られたという。
熊本の生産能力は50万台と小規模で、社員3500人のうち500人は海外支援要員。すでに量産工場というより、世界30カ所の2輪生産拠点を支援するマザー工場の色合いを強めていた。2輪車は製造原価の9割を購買部品が占める。当時、熊本の現地調達率は95%。しかし、率自体が高くても日本だけで集めれば肝心のコストが新興国より割高になる。「30人の子どももいつか自立する。このまま(日本拠点が)高い部品を買い続けていては、生産工場としての存在意義が薄れかねない」。そこで思い切って現調の引き下げをマザー工場からブチ上げた。国内部品メーカーなら日本語が通じ、電話1本で飛んできてくれるうえ融通も利く。だが、日本でものづくりを続けるために、あえて安寧秩序を崩す。熊本発の革命宣言だった。
大胆な“仕分け”で仕様を4分の1に
同時期に海外では部品種類の膨張が問題化していた。たとえばハンドルに付けるゴム製グリップには、太さや長さ、材質、握りのパターン(溝)が微妙に異なる仕様が、1車種当たり30種類もあった。各国が自分たちにとって最適な材料、作り方、形へと微調整を加え続けた結果だ。だが、こうした非効率を温存すれば、今後、台頭が予想される新興メーカーと互角に戦えない。2輪部門全体が熊本宣言に呼応するのに時間はかからなかった。
昨秋以降、ホンダは大胆な“仕分け”に着手し、半年かけて各主要部品の仕様を約4分の1に削減。30あったグリップは7に、エンジンは25から10に絞り込んだ。これからは車種ごとの搭載部品を、残した仕様に順次切り替えていく作業が本格化する。08年に購買本部長として青山ホンダ本社に戻っていた山下常務が、その陣頭指揮を執る。
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