コロナ対策、位置情報活用に潜む「法律の穴」 「どう使ったか」の透明性は担保されるのか

✎ 1〜 ✎ 38 ✎ 39 ✎ 40 ✎ 最新
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

企業側がここまで神経をとがらせる背景には、現行の個人情報保護法の適用対象に公的機関が含まれていないという事情もあるだろう。

今後は同法の改正で、独立行政法人、さらには地方自治体などへと対象を広げることも想定されてはいるが、「現時点では法律に穴が残っており、民間事業者から出たデータを政府がどう使うのか、十分に監視・監督しにくい状況だ」(プライバシー保護に詳しい日本情報経済社会推進協会の寺田眞治・主席研究員)。

日本とEUで異なる事情

EUで運用されているGDPR(一般データ保護規則)においては状況が異なる。EU基本権憲章で個人データ保護の権利の遵守について「独立の機関による監督を受けるものとする」ことが規定されているため、データ保護監督機関(DPA=データ・プロテクション・オーソリティ)という第三者機関が置かれており、ここが公的機関、民間企業に区別なく規制の適用や牽制を行う役割を担っている。

こうした監視体制やルールが明確になっていることで、逆に今般のコロナ危機のような有事の際には、企業側も戸惑うことなく政府側に、真に有用なデータ提供を行いやすい。

一方の日本は、監督機関である個人情報保護委員会が行政に内包されており、欧州のような運用を行うにはこうした体制から見直す必要がある。

コロナショックに直面した企業の最新動向を東洋経済記者がリポート。上の画像をクリックすると特集一覧にジャンプします

とはいえ、新型コロナの感染拡大は目下起こっている。法改正を待っている暇はない。現行法制化で感染防止策に民間企業のデータを問題なく活用していくためには、「どんなデータをどのように使ったか、政府側、企業側が遅滞なくリポートを一般公開し、透明性を担保すること」(寺田氏)だという。

国民の知らぬ間に、データの活用範囲がなし崩し的に広がることは防ぐべきだ。政府には一層の説明責任が問われる。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

この著者の記事一覧はこちら
中川 雅博 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事