コロナ対策、位置情報活用に潜む「法律の穴」 「どう使ったか」の透明性は担保されるのか

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国内企業では、ヤフーが独自データの公開に踏み切っている。3月30日には、ヤフーが取得している位置情報を基に近接する3県(埼玉県、千葉県、神奈川県)から東京都への来訪者数(推計値)の変化に関する調査リポートを公開。続いて4月7日には緊急事態宣言に関連して、ヤフー上でどんなキーワードが検索されているかの調査リポートを公開した。さらに9日には、同社の法人向けデータソリューションサービスを都道府県等へ無償で提供することも発表している。

ヤフーが公開した「緊急事態宣言」を含む検索キーワードの検索数ランキング(画像:ヤフー・データソリューションサービス)

これとは別に、ヤフーは政府要請に対する対応方針もメディア向け、ユーザー向けに明確に打ち出している。そこでは、「国民の生命が危険にさらされている現下の事態の深刻さに鑑み、外部有識者のアドバイスを踏まえ、本要請については、以下の事項を内容とする協定書を結びプロセスの透明性を確保することを前提に協力する」と強調した。

つきまとうレピュテーションリスク

ここでいう「以下の事項」には、「提供する統計データの利用目的を明確に限定し、かつ、当該目的の範囲内で利用することが担保されること」「提供した統計データがどのような形で政府による感染症対策に利用されたかを含めた有効性について一定期間後に(ヤフー側に)フィードバックがなされること」などが含まれている。

今回政府が要請した統計データは個人情報とは見なされないため、個人情報保護法においてはユーザーの個別同意がなくても外部提供が可能とされている。とはいえ、企業側にはレピュテーション(信用性)リスクがつきまとう。むやみに自社データを第三者に提供するわけにはいかない。

「分析対象となるデータ、分析方法、データの提供先について、どこまでユーザーに説明するのか。より進んで、(データ取得・提供に関して)ユーザーの意思を何らかの形で反映できるようにするのか。そういったことを事業者がしっかり考え、工夫していかなければならない」(ヤフー広報)

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