新型コロナウイルスの感染が世界的に広がる中、日本の商用車(トラック・バス)メーカーにも本格的な影響が及び始めた。いすゞ自動車は、海外最大の生産拠点であるタイの工場の操業を4月13日から一時休止する。現時点では5月からの稼働再開を予定しているが、状況次第で休止が長引く可能性もある。
新型コロナによる混乱を受け、いすゞは4月7日時点で、イタリア、南アフリカ、エジプト、マレーシア、フィリピンなど15カ国で工場が休止している。これらは基本的に消費地にあるピックアップトラックや商用車のノックダウン工場(生産国から輸出された部品・コンポーネント1式を完成車に組み上げる工場=KD工場)だが、新たに休止するタイは話が別だ。
主力車種「D-MAX」の生産ストップ
13日から稼動を休止するのは、子会社・泰国いすゞ自動車がバンコクで操業する2カ所の工場。貨客兼用車の中型ピックアップを中心に派生型SUV、商用トラックの生産を手がけ、合計従業員数は約5700人に及ぶ。別の現地子会社が運営するエンジン工場も同時に休止し、4月いっぱいは操業をとりやめる。
ピックアップは乗用車カテゴリーに近い車種だが、商用トラックと並ぶいすゞの主力事業であり、タイはその最重要国だ。現地では1トン積みの中型ピックアップが業務用や農作業用、さらにはファミリーカーとして広く使用され、タイの全新車需要(2019年は約100万台)の5割を占めている。
そのタイのピックアップ市場において、いすゞの「D-MAX」はトヨタの「ハイラックス」と並ぶ大人気車種。現地のピックアップで3割超のシェアを握り、毎年、一般乗用車を含む全車種の中でも販売台数首位をハイラックスと競っている。2018年度実績で見ると、D-MAXの世界販売・約34万台のうち、タイ1国だけで実に半分近い16万台が売れた。
タイの2工場はD-MAXのほぼ全量を製造し、生産台数の約半分をタイ国内で販売。残りは完成車、または仕向地で組み立てるKD方式で、豪州や中近東、欧州、アフリカなど100カ国以上に輸出している。つまり、ピックアップ事業のまさに根幹を担う生産拠点が今回、新型コロナ禍で操業休止に追い込まれたのだ。
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