急を要さない手術や外来クリニックなど、サービスの提供を一部停止した部門の看護師などについては、配置換えとそれに伴う研修が進められていた。看護部門の責任者、ジュディ・マクローリンが言うように、「今までのやり方を根本的に変える必要がある」ということだ。だがそれでも追いつかない。病院では市の医療予備隊から100人以上のボランティアの医師や看護師の派遣を要請し、受け入れ準備が急ピッチで進む。
電話が終わると、ガスペリーノ医師は呼吸器治療の責任者と廊下で打ち合わせをした。病院には98台の人工呼吸器があったが、その多くは最近調達したものだ。
中には、国に備蓄されていた持ち運び用のものも含まれる。職員たちは、1台の人工呼吸器で2人の患者を治療するためのシミュレーションを進めていた。困難かつリスクの高い手法だが、「命を救うには、そうするしかない」(ガスペリーノ医師)。
人工呼吸器につながれた妊婦
スピーカーから警告音が流れ、2人の会話を遮った。「コードブルー、6B。コードブルー、6B」。
救急医療チームは、病院のあらゆる場所で発生する緊急事態に対応することが求められる。夜勤明けで帰宅する予定だったガスペリーノ医師も、数十人の医療従事者とともに患者の病室に駆けつけた。
「COVIDか?」と誰かが尋ねた。
「いや、COVIDじゃない」との返答。
若い研修医が男性のベッドの両側に立ち、交代で胸部圧迫を施していた。看護師が病室から駆け出し、医療品を手に戻ってきた。ガスペリーノ医師は大静脈にカテーテルを挿入し、患者の体内に治療薬を送り込んだ。男性の脈拍が回復した。
これとほぼ時を同じくして、妊娠中の患者が帝王切開を受けるために、ICUから手術室へと運びこまれていた。女性は30代前半。母体の命を救うため出産を予定より2カ月近く早める必要があった。医師は前日、胎児の肺の成長を促すため、2回のステロイド剤投与を指示していた。
少し前に行われた朝の回診で、研修医が女性の容体について報告していた。前日の夜に人工呼吸器につながれ、鎮静剤を投与されたという。ローゼンバーグ医師は心の中で呪った。何て残酷な病気なんだ。(後編に続く)
(執筆:Sheri Fink記者)
(C)2020 The New York Times News Services
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