ほとんどすべての患者が人工呼吸器を使っている。80代の患者もいれば、30代の患者もいる。医療従事者はあらゆる手を尽くしており、息つく暇もない。「そうしなければ、死が待ち受けている」。これが現場の声だ。
瀕死の患者への緊急介入が頻発
その夜は、とりわけつらいものだった。次から次へと患者に挿管し、人工呼吸器につなげる必要があった。瀕死の患者への緊急介入である「コード」が3件同時に発生することもあった。
救命医療を担当するジョシュア・ローゼンバーグ医師は翌朝、ブルックリン・ホスピタル・センターに到着した。数時間後、集中治療室(ICU)がある6階から仮設のICUが設置された3階に駆け下りた際、目をかけている医学生に出くわした。
「自宅にいるんじゃなかったのか」。医師は驚きを隠せず、そう尋ねた。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、医学生の臨床ローテーションは中止になっていたからだ。医学生は答えた。「母がここにいるんです」
「くそっ、なんてことだ!」。45歳のローゼンバーグ医師はそうつぶやくと、母親の病床がどこか尋ねた。「今そっちに行くところだよ」。医師はそう言って、医学生が自分の携帯電話番号を知っているか確かめた。
この少し前、ローゼンバーグ医師らは、ICUの研修医から患者の症例について説明を受けていた。早口で略語を多用したものだった。この週の月曜日は、診なければならない患者の数がとてつもなく多かった。
「急性低酸素性呼吸不全により入院。COVID-19に続発したもよう」
「急性低酸素性呼吸不全により入院。確認されたCOVID-19に続発」
「急性低酸素性呼吸不全により入院。COVID-19が強く疑われる」
新設のICUのベッドに横たわる患者のほとんどは、6階の集中治療室と同様、人工呼吸器を装着していた。