ライズ激売れで、ヴェゼルやC-HRが苦戦する訳 ダイハツがトヨタに供給するSUVが絶好調

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今は新車として売られるクルマの38%が軽自動車で、次に多いのが25%のコンパクトカーだ。SUVは13%前後になる。そのために国内販売ランキングの上位には、ホンダ・N-BOX、ダイハツ・タント、スズキ・スペーシアといった背の高い軽自動車が並ぶ。小型/普通車も、ノート、アクア、シエンタ、フィット、ヤリスといったコンパクトな5ナンバー車が中心だ。この販売比率を考えると、ライズの高人気も理解できるだろう。コンパクトカーとSUVという、売れ筋カテゴリーの要素を兼ね備えるからだ。

ライズの高人気には、昨今のクルマの値上げも影響した。2000年頃は、2Lエンジンを搭載する初代エクストレイル、2代目CR-V、2代目RAV4といったSUVの価格が200万円前後だった。安全装備は今に比べると乏しく、商品力も低かったが、価格も安かった。

それが今では消費税が10%に高まった影響もあり、エクストレイル、CR-V、RAV4の価格帯は、比較的求めやすいグレードでも280万円から320万円に達する。

購入するクルマが小さくなっている

その一方で、日本の平均所得は1990年代の終盤をピークに下がり、多少は持ち直したが、今でも20年前の水準に戻っていない。つまりクルマは値上げされ、所得は減ったから、購入するクルマが小さくなっている。

この動向もライズに人気が集まった理由だ。ライズで中級に位置するGの価格は、前輪駆動の2WDが189万5000円で、4WDは213万3700円になる。最上級のZは2WDが206万円で、4WDは228万2200円だ。直列3気筒1Lターボエンジンを搭載するコンパクトSUVなのに、価格は20年前のRAV4やエクストレイルに近い。

「ライズ」の後ろ姿(写真:トヨタ自動車)

そこでライズ2WD・G(189万5000円)の購入費用を計算すると、ディーラーオプションで約15万円のカーナビを装着して、税金+自賠責保険料+各種諸費用も加えると、合計で約223万円になる。

おそらく多くのユーザーがクルマを買おうとしたとき、諸費用を含めて200万円から230万円が中心的な予算だろう。そのために今は、SUVではコンパクトサイズが好調に売れて、ミニバンも売れ筋がセレナやヴォクシーからコンパクトなシエンタとフリードに下がった。ライズの人気が今後どのように変化するかはわからないが、ボディサイズ、機能、価格を考えると好調に売れる必然性がある。

したがってSUVを選ぶときは、コンパクトな車種に注目するとよい。後席や荷室の広さを重視するならヴェゼルやスズキのクロスビー、スポーティな運転感覚を求めるならC-HRやマツダCX-30、SUVらしい力強いイメージを重視するならライズ&ダイハツブランドのロッキーという具合に検討したい。上記のライバル同士を乗り比べると、各車の個性がよくわかり、さらに正確な車種選びを行える。

渡辺 陽一郎 カーライフ・ジャーナリスト

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わたなべ よういちろう / Yoichiro Watanabe

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまにケガを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人たちの視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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