TDKが下方修正、消えた電子部品の楽観ムード コロナショックで頼みの5G需要にも懸念

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業績修正は減損影響が大きいが、中国要因も見逃せない(撮影:尾形文繁)

2月までは5G特需で楽観ムードが漂っていた日系電子部品各社が、新型コロナウイルス流行受けてその影響をにわかに測りかねている。

3月25日、電子部品大手のTDKが2020年3月期の業績予想を下方修正した。当初、売上高1兆3900億円、営業利益1200億円と増収増益を見込んでいたが、それぞれ1兆3600億円、950億円と一転減収減益となる見通しだ(2019年3月期は売上高1兆3818億円、営業利益1078億円)。

TDKの下方修正には業界関係者から驚きの声も出た。というのも、第3四半期(2019年10~12月)までに累計で1092億円の営業利益を計上していたからだ。通期の営業利益予想を従来から250億円引き下げたが、そのうち175億円は一過性のもの。自動車のモーターなどにも使われている磁気製品の生産設備の減損が大半を占める。

中国工場の稼働率が低下

この減損以外に、TDKは新型コロナウイルス拡大に伴う中国工場の稼働率低下や中国向けの販売落ち込みを下方修正の原因に挙げている。「中国工場の稼働率がそんなに(業績修正につながるほど)低かったとは」と、ある外資系証券会社のアナリストは自身の見通しの甘さを認める。

会社側は詳細を開示していないが、下方修正の一因は傘下の中国・香港の電池メーカーATLとみられる。ATLはスマホなどの携帯電話向け電池市場で約3割の世界トップシェアを握っており、アップルやサムスンに供給しているとされる。ATLが属する「エナジー応用製品事業」のセグメントは採算が高く最大の稼ぎ頭だ。

ATLは鴻海精密工業をはじめとするスマホ組み立て工場などを供給先に持つ、典型的な中国で築かれたスマホサプライチェーンの一角だ。ATLの生産拠点は福建省に集中している。2020年1~3月に現地当局が行った移動制限の影響から人手不足が起き、稼働率に影響が出たとみられる。

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