TDKが下方修正、消えた電子部品の楽観ムード コロナショックで頼みの5G需要にも懸念

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車載向けに逆風が吹く中、電子部品各社は改めてスマートフォンをはじめとする通信機器向け需要に期待を寄せる。メインは次世代通信規格「5G」の本格化だ。2020年はスマホ各社が5G対応機種を出すことが予定され、通信各社も5G対応の基地局を設置するとみられていた。

5G通信機器関連の需要拡大が目先で落ち込んでも、その後、反転するとの見立てが各社にはある。ただ、そうした”楽観論”が2020年度に実現するかは不透明だ。

新型コロナウイルスの拡大で、複数のスマホメーカーでは2020年発売予定だった5G対応の最新機種の開発が遅れていると指摘されている。消費の落ち込みが懸念される中、予定通り新商品が出なければ、需要を喚起できずスマホ全体の販売減少が避けられない。中国通信機器大手のファーウェイは3月31日に行った記者会見で「予測する時間がない」として例年発表するスマホの出荷台数見通しを出さなかった。

5G投資が一時的に止まるケースも

すでに現時点のスマホ部品の発注が「2019年よりも2割減」(コネクターメーカー幹部)との話もある。2019年末から本格化している5G対応の通信基地局の投資についても、「一時的に(投資が)止まるところが増え、関連部品の出荷に影響が出ている」(大手電子部品メーカー首脳)との声も出始めた。

スマホ市場に暗雲が漂う中、頼みの綱となっているのは皮肉なことに新型コロナウイルスが発生した中国の官製需要だ。中国共産党の政治局常務委員会は3月4日に「5G通信やデータセンターなどの新たなインフラ設備の建設を加速させる」と表明。景気テコ入れの一環として、2020年2月末時点で約16万カ所に設置されている5G通信基地局を年内に60万カ所以上にする予定だ。

「中国が5Gをテコ入れすれば、欧米も負けじと投資するだろう」(前出の首脳)と、中国への対抗意識から世界の5G投資が喚起されるとの見方まである。5G需要がいずれ来るのは間違いない。だが、新型コロナの影響が見えないだけに、一国の政策に過度な期待を寄せて今後1年を見通すのは楽観的すぎるだろう。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。台湾台北市生まれの客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説の研究者でもある。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、アニメが好き。

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