新型コロナ院内感染、そのとき何が起こったか 東京・佼成病院が経験した「苦闘の3週間」

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2月中旬に新型コロナウイルスの感染者が出て以来、苦闘の3週間を経験した東京・杉並の立正佼成会附属佼成病院(記者撮影)

医療崩壊が現実味を増している。東京都では永寿総合病院(台東区)や慶応大学病院(新宿区)など有力な病院で新型コロナウイルスの院内感染が見つかり、外来診療を取りやめるなどの動きが広がっている。

2月に4人の感染者が確認された杉並区の立正佼成会附属佼成病院もその一つだ。2月といえば、医療関係者の間でも新型コロナウイルスに対する知識が浸透していない時期だった。そんな中、手探りの苦闘を続けた医療現場は、どのようにして感染拡大を防いだのだろうか。

入院から3日後に「普通の肺炎ではない」

3月9日、外来診療を再開した佼成病院のホームページに、診療再開の知らせが公開された。そこには病院関係者の苦悩がつづられていた。

「この3週間、病院を閉鎖した事による影響は予想以上に大きく、現状は民間病院である当院存続の危機であります」

同病院の病床数は340床。内科から外科まで幅広く診療科をカバーし、杉並区や中野区の地域医療を支えている。

1人目の感染患者が病院に来たのは2月13日のことだった。頭を打ったという80代の男性が脳神経外科を受診した。検査の結果、頭部に異常はなかったが、CT検査で肺炎が見つかり、入院することになった。発熱は37.6度。当初は「普通の肺炎」と考えられた。

しかし、入院から3日後の2月16日、病状が急激に悪化した。その前日、院内では新型コロナウイルスによる肺炎についての勉強会が行われていた。「これはおかしい。普通の肺炎ではない」。そう判断した当直医は、顔を覆う医療用マスクなどを着け、気管挿管(気道の確保)を施した。4人部屋にいた男性は個室へ移された。

【2020年4月4日8時35分追記】永寿総合病院の表記と病状悪化時期の日時に誤りがありました。お詫びして修正いたします。

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