新型コロナ院内感染、そのとき何が起こったか 東京・佼成病院が経験した「苦闘の3週間」

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外来診療をやめている間も、一部の患者の診療は続けていた。がんや人工透析、糖尿病は治療を中断できない。例えば、抗がん剤を注射しているがん患者には治療を続けなければならない。薬を希望する患者の診察は、1階のフロアだけで行った。玄関近くに間隔を空けて椅子を並べ、その場で患者から話を聞いて薬を出していた。

病院は3月9日から外来診療を再開したものの、二度とウイルスを持ち込ませないように厳重態勢が続いている。

外来患者は感染リスクがないかどうか、フローチャートに沿ってトリアージ(振り分け)を行う。病院入り口に置かれたサーモグラフィーを通り、発熱がなければ外来へ進める。発熱者は別室で症状を聞き取り、通常のインフルエンザの対応でよいと判断されれば2階の内科を受診する。それ以外の患者は、ウイルスが外に出るのを防ぐために特設された陰圧室へ進む。

病院倒産が増える恐れも

4月以降は救急受け入れも再開し、ほぼ通常通りの体制に戻ったが、3週間の病院閉鎖は痛手となった。通常時は1日約700人いる外来患者が、病院閉鎖期間中は100人まで減少。外来再開後は500人ほどまで戻っているが、元通りとはいかない。2月と3月の2カ月間の収入は通常の6割程度になった。

経営が盤石な病院ならば感染者が発生しても持ちこたえられるが、一般の民間病院に感染が拡大すれば、感染者が1人出ただけで大打撃となる病院も出てくるだろう。民間病院でつくる日本医療法人協会の加納繁照会長は「民間病院は公立と違い、赤字が補填されず、病院倒産が増える可能性がある。緊急融資などの補助が必要だ」と危惧する。

一方、全国の開業医が加盟する全国保険医団体連合会は、国に対して感染拡大や院内感染防止のための財政支援や休診時の休業補償を要請している。同連合会が3月中旬に行った調査では、約8割の医療機関でマスクや消毒液の在庫不足や購入の見通しが立たないという。同連合会のある理事は「病院やクリニックではマスク不足が深刻だ。このままでは院内感染の拡大を防げない」と言う。

感染の爆発的流行前に病床確保が急がれるが、院内感染防止のための財政、物資の支援が急務となっている。

井艸 恵美 東洋経済 記者

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いぐさ えみ / Emi Igusa

群馬県生まれ。上智大学大学院文学研究科修了。実用ムック編集などを経て、2018年に東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部を経て2020年から調査報道部記者。

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