2人目の感染患者は男性の妻で、70代の女性だった。男性が病院を訪れた日、妻は風邪の症状が治まらず近隣のクリニックから紹介されていた。男性の異変が確認され、女性も相部屋から個室へ移されたという。感染者2人の来院から3日後、患者らは完全隔離されたことになる。
病院の苦闘は、ここから始まった。
1つは検査だ。同病院の高橋信一副院長は「当時、杉並区に頼んでも、東京都に相談しても、すぐにはPCR検査を受けさせてくれなかった」と話す。というのも、2月16日時点で新型コロナウイルスに関して検査を受けられるのは、中国からの帰国者やその接触者などに限定されていたからだ。
それでも病院側は検査を強く求め、東京都による検査を受けられることになった。男性の陽性結果を受け、家族である女性の検査も可能になった。
患者を運ぶ救急車がない!
男性の陽性結果が出たのは18日。翌19日、病院は閉鎖された。新規患者の外来や救急の受け入れは中止された。受診予約をしていた約500人の患者に電話し、すべての診療を断った。
2つ目は、受け入れ病院への搬送だ。患者を感染症の指定病院へ移さなければならなかったが、どこへ搬送したらよいかわからない。杉並区の保健所に相談すると、候補となる病院を複数教えてくれたが、受け入れの交渉は病院がする必要があった。
やっと決まった受け入れ先が、文京区にある都立駒込病院だった。しかし、患者を病院まで運ぶ手段がない。「感染患者を搬送するために救急車を出すことが認められなかった。わらにもすがる思いで近くにある消防署にかけ合ったが断られ、民間の救急サービスに電話してもだめだった」(高橋副院長)
助け船を出したのは、病院長と親交があった民間病院の荻窪病院(杉並区)だった。同院から借りた救急車を総務課長が運転し、主治医と看護師が同乗して男性患者を駒込病院まで搬送した。女性患者も陽性が判明した後日、駒込病院へ搬送された。
しかし、第3の苦闘が待ちかまえていた。
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