「クルマ」ではなく「ブランド」を見せる空間
嶋:まずは、インターセクトのコンセプトを教えてください。
久保:レクサスのブランドを強化するためには、グローバル都市とつながらなけらばいけないという発想が根底にあります。都市、人、文化とクルマをつなげてブランドを根付かせたいという構想があり、その第一弾としてトヨタ自動車の母国である日本にインターセクトをオープンさせました。今後はニューヨークやドバイでも展開する予定です。
嶋:ヨーロッパではなく、中東のドバイというのが少し意外ですね。
久保:ドバイは都市同士のハブになっていて、中東をはじめヨーロッパなど、さまざまなカルチャーが入り混じっています。インターセクトのコンセプトに合致するんです。
嶋:確かに、UAEは新しいデスティネーションとして注目されていますね。インターセクトのデザインはユニクロのグローバル旗艦店やナイキ原宿店を手掛けた片山正通さんが担当されてますよね。
久保:片山さんは「モノを売る空間づくり」ということに優れたインテリアデザイナーで、ファッションなどの物販施設を中心に、国内外に多くの実績をお持ちです。しかも、日本と海外の文化を融合することや、伝統と今の時代を融合するバランス感覚にも非常に優れている。「ブランドを売る」という難しい課題に対して、彼に頼めば、これまでにない面白い施設ができると思いました。
嶋:片山さんにはデザインのコンセプトはどうやってオリエンしたのですか?
高田:まずお願いしたのは、いわゆる「クルマのショールーム」ではなく、「ブランドを表現する空間」にしてほしいということです。基本的には、それだけ。もちろん僕らも議論に参加して考えを伝えるのですが、結果的に提案してもらった案は、想像していたものより数段上。完全な「片山オリジナル」なのです。こちらの意見を彼のフィルターを通じて上手く“編集”してくれるから、一緒に議論できたという喜びもある。初めから最終的にはクリエイターの感性を尊重しようと決めていましたが、片山さんでないとこんな創造はできなかったなと思います。
久保:建物を覆う「スピンドルグリル(※注)」のバンブースクリーン(冒頭写真)は、職人泣かせな部分があって、はじめは「こんなのできないよ」と言われてしまいました。素材の特性に反して、非常に微妙なカーブを表現しているので、製作が難しいのです。職人の方の試行錯誤の末、ようやくつくることができました。細部に匠の技術や知恵が散りばめられたインターセクトには、我々がもともと大切にしている「ものづくり」へのこだわりが詰まっているんです。
高田:竹製のスピンドルグリルとレクサスの目指す「ものづくり」が、共鳴しあっていると感じました。
嶋:スピンドルグリルといえばレクサスのデザインアイコンでもあり、紡績機の部品ですからトヨタのものづくりの原点の象徴でもあるわけですね。
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